2012年02月09日 13:57:58
講演趣旨 森林の保護と再生はいまや地球レベルでの緊急アジェンダである。1980年代から国際的な関心を集めてきた東南アジアの熱帯雨林消失という状況の中でも、フィリピンの林野率の低下は著しく、森林面積は世界でもトップクラスのスピードで減少していた。しかし、近年になってから減少の傾向に歯止めがかかり、わずかながら増加に向かっている。 増加への転換をもたらしたのは、1989年に導入されたコミュニティ森林管理であるといわれる。理念としてのコミュニティ森林管理は、それまでの林業政策や民間企業による用材伐採と収益においては考慮されていなかった地域社会と住民に焦点を当て、森林を生活の場とする人々に管理を委ね、その暮らしや生計を守りつつ持続的な森林開発を実現することを目的としている。 一方、減少から増加に向かったとはいっても、その増加率は0.70%と東南アジアでも低く、早い時期から自然保護が法制化されてきており、多大な国家予算が投入されてきたにもかかわらず、森林政策が期待通りの成果をあげていないという批判の声も高い。この実効性の低さの理由として、事業関係者の汚職や担当者の管理能力の低さもあげられるが、さらに重大なのは地域住民の暮らしと森林事業との齟齬である。 森林保護においては、グローバルな枠組としての解決策を見出すことが必須であるとともに、個別事象であるローカル状況の精査、特に住民の暮らしに基づいた「生活者の論理」の検証もまた必要とされている。今回は、フィリピン中部パナイ島のマアシン水源林を例に、人々がどのように生活してきたのか、森林事業とどう付き合ってきたのかという点から「自然保護」とは何かを考える。