国際社会学 (担当 小井土彰宏)

国際社会学I

国民国家を超えた社会過程を分析するアプローチである国際社会学が蓄積してきた諸理論
を前半に概説する。そして後半では、近年頻繁に語られながら不明確なまま使用されてい
るグローバル化について、様々な領域で進行する世界的な統合と再編成を検討しながら、
その「国際化」とも異なる独自の意義を考えて行きたい。

教科書

梶田孝道 (編)  1999 『国際社会学 第二版』 名古屋大学出版会 (丸善に入荷予定)

全般的参考書

*Sklair, Leslie. 1992. Sociology of Global System. Baltimore: The Johns Hopkins
University Press. 野沢慎一 (訳) 『グローバル・システムの社会学』玉川大学出版会 

講義計画

I. 国民国家の相対化と国際社会学の諸理論

1. 国民社会の自明性の解体

国民国家を前提とした戦後の社会科学の枠組みを再検討し、それがいかに問い直されてき
たのかを振り返る。

(参考文献)
梶田 (編) 『国際社会学』第1章
馬場伸也 1980 『アイデンティティの国際政治学』東大出版会
小倉充夫 1995 「国際社会学の構想」 綿貫・広瀬 (編) 『新国際学』東大出版会pp.145-166.

2. 世界システム視角の構造

一国的な規模で社会変動を捉えることはできないとし、16世紀以来にヨーロッパに誕生し
た資本主義世界システムの展開と再編成の過程を分析の焦点とした世界システム視角
World-System Perspectiveの主張とその理論的な構造を概観する。

Mintz, S. 1985 Power and Sweetness: The Place of Sugar in Modern History.
川北他 (訳) 1988『甘さと権力?砂糖が語る近代史』平凡社
Wallerstein, Immanuel. 1974. The Modern World-System I. 『近代世界システム I』
岩波書店
――――. 1984 Historical Capitalism. 川北訳 『史的システムとしての資本主義』
岩波書店
 
3. ナショナリズム (国民意識) の起源論

一見古い現象に思える国民意識。この意識が実は比較的新しいものであり、そして近代的
なテクノロジーと関連していることを指摘しながら、近年活発化しているナショナリズム
の社会学を概説する。

(参考文献)
Anderson, Benedict. 1991 The Imagined Communities (Revised Edition).
『想像の共同体:ナショナリズムの起源と伝播』NTT出版。
Hobsbaum, 1986 The Invention of Tradition. 梶原他 (訳) 『伝統の創造』紀伊国屋書店
吉野耕作 1997 『ナショナリズムの文化社会学――現代日本のアイデンティティの行方』
名古屋大学出版会。

4. サブ・ナショナルな単位からの挑戦

(1) エスニシティethnicityの登場: 民族現象の復興とその理論化

ナショナルな単位を下から揺るがす様々な運動が1960年代以来活発化した。衰退して
いくかと思われたネーションより小さな「民族集団」が、近代化の中でむしろ強化し行っ
た過程を検討し、これを分析したいくつかの理論を概説する。

(参考文献)
Glazer, Nathern, & Daniel P. Moynihan. 1975. Ethnicity: Theory and Experiences.
内田 (訳) 『民族とアイデンティティ』三嶺書房
小井土彰宏 「エスニシティ」宮島喬 (編)  『現代社会学』第4章
関根政美 1994『エスニシティの政治社会学』名古屋大学出版会

(2) 地域主義の台頭

近代化と国民経済の統合の中で、意義を失うかと思われた地域的なアイデンティティ。こ
れが、近年むしろその存在を主張し、重要な社会運動の基盤となってきた。ヨーロッパを
中心に様々な運動の背景にあるものを考える。

(参考文献)
伊藤るり 「エスニシティと西欧国民国家」梶田 (編) 第4章
宮島・梶田  (編) 『統合と分化の中のヨーロッパ』有信堂

II. グローバル化の衝撃とその諸相

5. 企業組織のグローバル化: 国際統合からグローバル・ネットワークへ

多国籍企業の世界的な展開は戦後進行した。近年繰り返し指摘される企業組織のグローバ
ル化は、果たしていかなる点で新たな変化なのだろうか。量的な変動を踏まえながら、構
造的な変動を検討したい。

(参考文献)
Reich, Robert. 1990 The Work of Nations: Preparing Ourselves for 21st Century.
Knopff. 『ワーク・オブ・ネイションズ』中谷訳 ダイヤモンド社
夏目啓二 1999『アメリカIT多国籍企業の経営戦略』ミネルヴァ書房
Dickens, Peter. 1992 Global Shift: Internationalization of Economic Activity (2nd ed.).
Guilford Press.

6. グローバル・コミュニケーション

グローバルな一体化にリアリティを与えるコミュニケーションの世界的なネットワーク。
しかし、そこには国家の規制との複雑な相互関係が持続し、また地域的な・エスニックな
文化を一方的に均質化するのでは済まない交錯がある。国際的な編成とローカルな影響を
考えていく。

(参考文献)
小関 健  『グローバルメディア革命』 リベルタ出版。 第二章。
門奈直樹 1996 「グローバルメディアと文化帝国主義」 井上他編 『メディアと
情報化の社会学』岩波書店
Frederick, Howard. 1993. Global Communication & International Relations.
Wadsworth Inc. 『グローバル・コミュニケーションーー新世界秩序を迎えたメデ
ィアの挑戦』 (川端他 訳) 松柏社

7. ツーリズムのグローバル化: 消費志向の国際移動としての観光

世界最大の産業の一つである国際観光。見逃されがちなこの活動の、国際的な編成とその
影響を途上国を中心に見る事で、国際的な文化の消費のあり方があたえる文化間の関係へ
の影響を考えてみたい。

(参考文献)
江口信清 1999 『観光と権力 ――カリブ海地域社会の観光現象』多賀出版
山下晋二 1999 『バリ 観光人類学のレッスン』東大出版会

8. 世界都市の構造 

世界的な活動の結節点としての巨大都市。華やかな情報中枢としての機能と、そのなかで
進行する不平等化について分析してゆく。

(参考文献)
町村孝志 1995 『世界都市東京の構造転換――グローバル化とリストラクチャリング』
東大出版会
Sassen, Saskia. 1989 Mobility of Labor and Capital: Cambridge Univ. Press. 森田
訳 『労働と資本の国際移動――世界都市と移民労働者』岩波書店。


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