研究分野と基本文献およびゼミの内容
1)フランス研究を始めるための教養書
饗庭孝男編『フランス六章』有斐閣、1980年。
現代フランスのいくつかの側面を、その専門家がかなり深くつっこんで分析した良書。
朝比奈 誼『フランス的ということ』、有斐閣、1983年。
フランス的といわれることの本質を考えた好著。
バルジーニ、浅井訳『ヨーロッパ人』みすず書房、1986年。
ヨーロッパのいろいろな国民の特徴をイタリア人が論じたもの。
クルツィウス, E.R、大野俊一訳『フランス文化論』みすず書房、1976年。
ドイツの碩学によるフランス文化論の古典。
------『現代ヨーロッパにおけるフランス精神』みすず書房、1980年。
ドイツの碩学によるフランス文化論の古典。
林 瑞枝『フランスの異邦人』中公新書、1984年。
フランスに住む現代の移民労働者を中心にその実態と問題を考察したもの。
小林善彦『フランスの知恵と発想』白水社、1986年。
フランス人の生活と発想法を知るのによい。
------『フランス学入門』白水社、1991年。
総合的なフランス研究に入るための入門書。
桑原武夫『フランス学序説』講談社学術文庫、1976年。
現代的なフランス学の提唱者による著。
桑原武夫編『素顔のヨーロッパ』朝日選書、1978年。
ヨーロッパの地方を主とした、日本人による本格的な調査の断片をエッセイ化したもの。
メイル,P、池訳『南仏プロヴァンスの12か月』河出書房、1992年。
英国人によって書かれた最近のベストセラーの翻訳。多少誇張されているが、南仏の人と雰囲気がよく分かる。
丸山圭三郎『フランス語とフランス人気質』日本放送出版協会、1982年。
フランス語を通じてフランスとフランス人を考える書。
森 有正『遥かなるノートルダム』筑摩書房、1967年。
------ 『バビロンの流れのほとりにて』筑摩書房、1968年。
フランス文明の根底に沈潜して、文明と人間の営みを考え続けた思想家による書。
メルメ,J、磯村他訳『フランス白書』エディシヨン・フランセーズ、1986年。
手軽なフランス何でも事典だが、内容は意外と手堅い。フランス語の原本 Francoscopie は定期的に内容が改定される。
根本長兵衛『小さい目のフランス日記』朝日文庫、1984年。
子供をパイロットとして見たフランスの新しい姿。
プズー,J、柏岡珠子訳『フランスの地理』三修社、1982年。
フランスの(自然・人文両方の)地理についての概略を知るのに便利。地方についての記述が詳しい。
玉村豊男『パリ雑学ノート』新潮文庫、1983年。
気軽なエッセイだが、パリというものを知るにはよい本。続編も文庫に入っている。
田辺 保編『フランス語で言えば』有斐閣、1985年。
フランス語を始めた人、また始めようと考えている人に、その背景を含めて、面白く説いた入門書。文法書ではない。
谷岡武雄『フランスの都市を歩く』大阪書籍、1983年。
日本の地理学者がフランスの各地の都市を歩いて書いたエッセイ。
寺尾 尚『フランス見たまま聞いたまま』三月書房、1987年。
医学留学生としてフランスに渡った心優しくユーモアのある日本人による好エッセイ。
富田 仁『フランス語事始め』NHKブックス441、日本放送出版協会、1983年。
日仏の触れ合いの歴史についての入門書。
和田 俊『パリの石畳』朝日文庫、1983年。
ジャーナリストの目から見たフランスとフランス人論。
渡辺守章『パリ感覚』岩波書店、1985年。
フランス演劇の学者にして演出家である著者による鋭く骨のあるパリ論。
ゼルディン,T、垂水洋子訳『フランス人』1、2、みすず書房、1988、90年。
英国の歴史学者によるフランス人論の名著。
2)辞典・事典など
〈仏和辞典〉
朝倉季雄他『新スタンダード仏和辞典』大修館書店、1987年。
文学作品などを読むのに最適な辞書。
大賀正喜他編『小学館・ロベール仏和大辞典』小学館、1988年。
仏和の大辞典として大変よく出来ている。百科辞典的な説明もあり便利。図書館で使い慣れてほしい。
大槻鉄男他編『クラウン仏和辞典』三省堂、1989年(第3版)。
初級用学習辞典としては便利。ただし、3年生からはこれではとうてい足りない。
中條屋 進・G.メランベルジェ・高井道夫他編『現代フランス語辞典』(le Dico)、白水社、1993年。
ネイティヴも編者に加わった仏和辞典。微妙なことも書いてあって面白い。
福井芳男他編『ロワイヤル仏和中辞典』旺文社、1985年。
中辞典としてくわしく適当な辞典。
〈和仏辞典〉
朝倉季雄他『スタンダード和仏辞典』大修館書店、1970年(初版)。
重信常喜・メランベルジェ他『コンサイス和仏辞典』三省堂、1980年(初版)。
高塚洋太郎他『コンコルド和仏辞典』白水社、1990年。
〈その他の学習辞典〉
リーチ,P. 他『現代フランス語法辞典』大修館書店、1975年(初版)。
上智の教員グループが作ったもの。例文が多く、作文をするのに便利。
リーチ,P. 他『現代フランス類語辞典』大修館書店、1978年(初版)。
上と同じく上智の教員グループが作ったもの。類義語の使いわけに便利。例文が多い。
ロベルジュ,Cl. 他『現代フランス前置詞活用辞典』大修館書店、1983年(初版)。
同じく上智の教員グループが作ったもの。前置詞の用法が例文を通してよく分かる。
福井芳男他編『フランス語会話表現辞典』旺文社、1986年。
さまざまな場面での会話的表現が見つかる辞書。日本の状況での例が多く実際的。
Corbeil, J.-Cl., Dico pratique, Larousse,1989
よい文を書くための参考辞書。つづり、文法、文型、略号、活用など、さまざまなことが指示されてあり、便利。
〈仏仏辞典〉
Dubois, J. et al., Dictionnaire du francais langue etrangere Niveau 1, Larousse,
1977.
日常のいきいきしたフランス語の例文が多く面白い。絵もウィットに富んだもので例文と共に考えると面白い。駿河台出版社で日本用に復刻版を出している。
Dubois, J. et al., Dictionnaire du francais langue etrangere Niveau 2,Larousse
1979.
日常のいきいきしたフランス語の例文が多く面白い。絵もウィットに富んだもので例文と共に考えると面白い。駿河台出版社で日本用に復刻版を出している。
Dubois, J. et al., Dictionnaire du francais contemporain, Larousse,1973.
フランス語で初めての日常語を多く取り入れた辞書で、話題になった。語法などを調べるのには使い易いが、本を読むには内容が足りない。これも駿河台出版社で日本用に復刻版を出している。
Guilbert, L. et al., Grand Larousse de la langue francaise, Larousse, 1985.
本格的な大辞典。文学的・言語学方面については大項目の形で取り上げられていて基礎的な概念を知るには便利。
Rey, A. et al., Le Grand Robert de la Langue Francaise, Dictionnaire Le Robert,1985.
本格的な大辞典としては使いやすいもの。CD ROM版もある。
Rey, A. et al., Le petit Robert 1, Dictionnaire, Le Robert,1993新版。
本格的な中辞典。本を読むのに向いている。CD ROM版もある。
Rey-Debobe, J. et al., Le Robert Methodique, Dictionnaire Le Robert,1982
学習辞典としてRobertで出されたもので便利。
Tresor de la langue francaise, Institut de la langue francaise1971〜
19世紀以降の文学を中心とした膨大なデータ・ベースをもとに作られつつあるフランス語宝典。未完だが、完成が近い。この元になっているデータベースの一部は(300冊の小説)CD
ROM (Discotexte)となっているので、コンピューターで利用できる。
〈仏英・英仏辞典〉
Atkins, B. T. et al., Collins Robert French English/English French Dictionary,
Collins / Societe du Nouveau Littre, 1978
口語的表現も多く取り入れられていて、英語と一緒に見るにはよい。
〈百科事典など〉
Grand dictionnaire encyclopedique Larousse 1〜10, Larousse,1985.
百科事典だが、ことばの辞典としてもユニークで面白い。
Rey, A. et al., Le petit Robert 2, Dictionnaire Le Robert, 1974.
本格的な固有名詞辞典。人名、事柄等を調べるのに便利。
Encyclopedia Universalis1〜20, Encyclopedia Universalis France, 1980.
大変に詳しい百科事典。分からないことはまずこれに当たるようにしたい。最近CD ROM判も出た。
〈その他の辞典・事典〉
朝倉季雄『フランス文法辞典』白水社、1955年(初版)。
何度も版を重ねている名著。文法で分からないところがあればこれを参照す るとほとんどのことは解決できる。ただし、使い慣れるまで多少時間がかか る。
朝比奈 誼他編『事典・現代のフランス』(増補版)大修館書店、1997年。
現代フランスのさまざまなことの分かる便利な事典。
デュボア,J. 他,伊藤・泉他訳編『ラルース言語学辞典』(Dubois, Jean et al., Dictionnaire de linguistique,
Larousse, 1973)、大修館書店、1980年。
小項目・大項目からなる手頃な言語学辞典。フランス語の例が多く、フラン ス語、英語からの索引もあるので便利。
菅野昭正他編『読む事典・フランス』三省堂、1990年。
現代のフランスを多角的に知るのに便利な事典。大項目主義なので、単行本 を読むような感じで読める。
大木 充他『フランス語身ぶり辞典』くろしお出版、1985年。
日本ではじめて出た、フランス人の身ぶりの辞典で、興味深い。
Quid, Robert Laffont
フランス語で書かれた年鑑。毎年新版が出る。フランスが中心だが、世界の 状況等についても分かって便利。
Mermet, Francoscopie, Larousse
フランスの現代生活についていろいろな項目にわたってデータと解説があり、 便利。約3年に一回改定される。
Mermet, Euroscopie, Larousse
現代ヨーロッパについてのなんでも事典。
3)一般的な新聞・雑誌(図書館にあるもので、専門的なものを除く)
〈新聞(日刊)〉
Le Monde
Le Figaro
〈雑誌(週刊)〉
L'Express
Le Nouvel Observateur
Le Point
〈雑誌(月刊)〉
Esprit
〈雑誌(季刊)〉
Projet
(泉 邦寿)
この部門では、言語と文化の関わりに関する文献を挙げる。そもそも、文化を総合的に考える場合に、「言語」が重要でかつ基本的な手掛りになることは論をまたないであろう。文化的な要因は言語に多大な影響を与えており、したがって言語の種々の側面を観察することによって、言語の中に息づいている、そういった各種の文化的営みを知ることができるからである。そして、このような文化の媒体として機能する言語それ自体の仕組も、広い意味で、やはり文化研究の基底をなすものとして観ておく必要があろう。
1)言語と文化
言語事象に現れる文化的要因は非常に広く、さまざまな分野にわたる。例えば、文化は民話・説話や民謡・童謡、またなぞなぞや諺といった言葉遊びの中などにも現れる。また学問的裏付けを離れて民衆の自由な発想から出てくる民間語源の中にも伺える。その文化を支える民族・信仰・民衆の暮らしがこれらの言語活動を作り出し、それらは今日に伝えられている。また文化は擬音・擬態語のオノマトペの問題、メタフォール(比喩の表現)、ことばのコノテーション(併示的・含意的意味)などにも深く関わりをもつ。言語は記号であり、ある種のシンボル性をもつが、その裏側にどのような文化的・歴史的背景が隠されているのか。ものごとの認識の仕方は言語ごとに異なるといわれるが、この現実界の切り取り方の違いもやはり文化と切り離しては考えられない。この点をつきつめれば認知モデルやプロトタイプを求めることになる。また言語によるコミュニケーションを側面から補う役目を果たすノン・バーバルな手段つまりジェスチュア(仕種)の問題もこのレベルで考察されねばならない。そして翻訳する場合にこれらの諸問題を考慮しなければならないことは明らかであろう。
2)言語と社会
言語事象に現れる社会的要因は、無論上記の1)の問題と重なり合うが、基本的な問題として例えば次のようなものが挙げられよう。社会階層による言葉遣いの違い(言語水準の問題)、男ことばと女ことばの差、また敬意表現の問題、外来語の流入とその扱い方、一国内における多言語使用と、その際に見られる言語間の抗争(言語戦争)の問題、また小数民族とその言語の処遇を含む言語政策の問題、等々。この分野の研究課題は多岐にわたる。
3)その他
上記1)と2)の両方にわたる問題であろうが、地域言語(方言)の問題がある。そこにはそれぞれの地域社会の生活ぶりが反映している。またフランス語の歴史を辿ること(語史)も文化の研究には欠かせないであろう。そこには各時代の人々の暮らしが息づいていて、それが時の流れの中でどのように変遷してきたかが観察できるからである。
4)言語の仕組
言語の仕組が文化的現象をどのように受容したか、文化的出来事が言語のメカニズムにどのように影響を与えたかを観るためには、その言語自体がそもそもどのような特徴と仕組をもっているかを知る必要があろう。そこにもさまざまな課題がある。
言語の本質である「記号」とはそもそもどのようなものか、「話す主体」とその手段としての言語との関わり、といった基本的な問題。また文学作品などに用いられるレトリック(修辞的手法)の問題、語彙の生成とその体系の問題、ことばの音的・形態的・構文的・意味的組織の問題、等々。
そして、これらの諸々の視点から観察できたことを比較文化の観点から、日本語・日本文化と対照して見ることもまた興味深いことであり、大事な研究課題になろう。
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1)言語と文化
丸山圭三郎『フランス語とフランス人気質』日本放送出版協会、1982年。(特にI章およびII章)
フランス語の話し手たちの生活様式、風俗、習慣を言語を通して観察し、フランス語の仕組やものの考え方の特徴を紹介する。
福井芳男『フランスの言語文化』日本放送出版協会、1985年。
フランス語がフランスの社会生活や文化にいかに深く関わっているか、その 精神形成にどう関与してきたか、等を扱う広範なフランス文化の入門書。
田辺 保編『フランス語で言えば』有斐閣、1985年。(特に1、2、3、7章)
フランス語の発想法、衣食住の語彙、ノン・バーバルな表現等、ことばの視点 からフランス文化を考え、日本文化との比較も試みる。
泉 邦寿『フランス語を考える20章--意味の世界』白水社、1978年。
日仏両語間の意味範囲の設定の仕方の違いから始めて、色彩語、類義語間の 相違、含蓄的意味(コノテーション)、「こ・そ・あ」の表現、等について論 究する中で、言語と文化の関連を探る。
泉 邦寿『フランス語、意味の散策--日・仏表現の比較』大修館書店、1989年。
フランス語に接して誰しもが抱く疑問や驚きは、日・仏両語間にある相違から 生ずるものが多い。文化の違いを基盤にした単語の意味や表現のずれを具体 例を通して平易に解説。
松原秀一『ことばの背景--単語から見たフランス文化史』白水社、1974年。
フランス語の「馬」、「スープ」、「床屋」など日常語の周辺を、広い知識 と逸話で語りながら、追求する。その背景に流れるヨーロッパ的なものを探 り、合わせて日本的なものとの違いを考える。
松原秀一『危ない話--続ことばの背景』白水社、1979年。
上掲書の続編。フランス語の「贈物」、「蛇」、「にんにく」などにまつわ る文化的歴史的 背景を探りつつフランス人の日常生活の底辺を支えている 根幹を描く。
杉野道男『ことわざの文化人類学』研究社出版、1985年。
40ほどの諺を英語、フランス語、日本語をはじめ各国語でどう表現するかを 検討し、その裏 側にある文化の違い、発想の違いを観る。
大木 充『フランス人の身振り辞典』くろしお出版、1985年。
フランス人の身振りを各種のタイプに分類し、図で示しつつ、それが表す内 容を紹介、解説する。日本人のしぐさとの比較が興味深い。
アト・ド・フリース著、山下圭一郎他訳『イメージ・シンボル事典』大修館書店、1984年。
言葉のもつ象徴的意味とそこに内包されるイメージは西欧文明の遺産として 現代人の内的現実に大きく影響している。神話、聖書、イコン、民間伝承、 諺、紋章、文学などに由来する豊
富な情報を提供してくれる。
唐須教光『文化の言語学』勁草書房、1988年。
ことばの本質(構造と機能)を明らかにし、言語と文化の相関関係を探る。 例えば民話を題材にして言語人類学的視点から検討する。
2)言語と社会
J. フィシュマン、湯川恭敏訳『言語社会学入門』(Fishman, Joshua A, The Sociology of Language,1972)大修館書店、1974年。
今日急速に発展しつつある社会言語学への手引き書。言語行動と社会的要因 はどのように関 連し合うかを、言語と行動タイプ、二言語使用、役割関係、 社会階層と言語、言語計画などの視点から解説。
増田純男『言語戦争』大修館書店、1978年。
言語をめぐる紛争・闘争をジャーナリストの目で分析する。従来のような経済 的・政治的利害 のみならず「言語」上の利害が抗争のたねになっている事例 (ベルギー、カナダ、アメリカ諸国など)を紹介する。
ウージェーヌ・フィリップス、宇京頼三訳『アルザスの言語戦争』(Philippe, Eugene, Les luttes linguistiques
en Alsace jusqu'en 1986)白水社、1994年。
ロマンス語圏とゲルマン語圏の境界に位置するアルザス地方で展開された二 大言語間の戦いの歴史を辿る。自らの言語と文化を守るために苦闘した人々 の姿を描く。
下宮忠雄『バスク語入門--言語、民族、文化』大修館書店、1979年。
仏・西両国にまたがる地域で話される系統不明といわれるバスク語とその民 族を日本に初めて紹介する。その民話・ことわざ・なぞなぞ等の言語文化も扱 う。
原 聖『周縁的文化の変貌--ブルトン語の存続とフランス近代』三元社、1990年。
フランスの少数民族の言語のひとつであるブルトン語(ケルト語)がいかに して現代まで生き続けてきたか、その変容過程や擁護運動を文化面から分析する。
Etiemble, Parlez-vous franglais ?, (Paris, Ed. Gallimard,1973)
1945年以降フランス語の中に急速に浸透した米語と、その隆盛に危機感を覚 えた著者が同胞に向かって警鐘を鳴らす。franglaisはfrancaisとanglaisの
合成語。
アンリ・ミッテラン、内海利明、神沢栄三訳『フランス語の語彙』(Mitterand, Henri, Les mots francais, Coll.
Que sais-je?, No.556, PUF)、 白水社、1984年。
フランス語語彙論の便覧。語数、使用頻度、歴史的要因、借用語、成句、意味の変化と現代の 語彙変動、などが扱われる中で、フランス語の語彙の特 性が浮き彫りにされる。
W. v. ヴァルトブルグ、島岡茂訳『言語学の問題と方法』(Wartburg, Walter von, Einfuhrung in Problematik
und Methodik der Sprachwissenschaft,Tubingen, Max Niemeyer Verlag, 1962)紀伊国屋書店、
1973年。
著者は共時態言語学と通時態言語学を総合したことで知られるが、特に第2 章には言語の変化 が言語内部の要因のみならず、社会文化的な要因により 起こることが多数の具体例とともに示
される。
田中克彦・H. ハールマン『現代ヨーロッパの言語』岩波新書、1985年。
現代ヨーロッパの言語的状況はいかなる社会的・政治的・文化的出来事の影響 のもとで成立した のかを概説した後、今現在話されている系統の異なる諸 言語の現況を解説する。
3)その他(語史など)
家島光一郎他 『現代フランス語のできるまで--フランス語小史』白水社、1962年。
フランス語はどのようにして成立したか、という問いに、細かい問題には立 ち入らずに、専門用語を極力避けて、素朴・簡明に答えようとした試みの書。
アルベール・ドーザ、中原俊夫訳『フランス語発達小史』(Dauzat, Albert, La langue francaise, sa vie, son
evolution, 1926)駿河台出版社、1966年。
通史という観点からではなく、語の生成、発音と綴学、文法形態と文章論と いった章を立て て、各々の観点から具体例を挙げながらその発展過程をた どろうとする試み。
Bruneau, Charles, Petite histoire de la langue francaise --Des origines a la Revolution, Paris, Lib. Armand Colin, 1969.
------- Petite histoire de la langue francaise--De la Revolution a nos jours,
Paris, Lib. Armand Colin, 1970.
音声学者であり方言学者である著者が、簡潔にまとめあげた古典的で基本的 なフランス語史。時代により2巻に分冊されている。
ジョルジュ・ムーナン、佐藤信夫訳『二十世紀の言語学』(Mounin Georges, La linguistique du XXe siecle,
Paris, PUF, 1972)白水社、1974年。
20世紀のアメリカおよびヨーロッパの主要な言語研究者を13人に絞って、 その研究の特徴を 解説しながら、そこに観察される一般言語学的な研究の 歴史を跡付ける。
4)言語の仕組
G. ムーナン、福井芳男他訳『言語学とは何か』(Mounin, Georges, Clef pour la linguistique, Ed. Seghers,1968)大修館書店、1970年。
言語研究を、構造主義基盤に立って、音韻論から統辞論、意味論から文体論 にわたって解説 する。そこに現れる諸問題を指摘し、そこで使われる概念 を簡明に説明する。
G. ムーナン、福井芳男他訳『意味論とは何か』(Mounin, Georges, Clef pour la semantique, Ed.Seghers,1972)大修館書店、1975年。
意味論への入門書。意味の最小単位である意味素への分析と意味的集合の中 に各々の記号の意 味を位置づけようとする意味場の研究を軸にして、意味 の構造化の試みを解説する。
ピエール・ギロー、佐藤信夫訳『記号学--意味作用とコミュニケーション』 (Guiraud, Pierre , La Semiologie, Coll.
Que-sais je? No.1421, Paris, PUF, 1971)白水社、1972年。
記号研究の概説書。記号とは何か、記号の役割、意味とコード、認識と記号、 美的あるいは社 会的コードなどを扱う。
E. バンヴェニスト、岸本通夫監訳、河村正夫他訳『一般言語学の諸問題』 (Benveniste, Emile, Problemes de linguistique
generale, Paris, Ed. Gallimard, 1966)みすず書房 、1983年。
著者は言語現象における「主体性」の重要性を唱えたことで知られるが、こ の主体性と社会・ 文化の関係、コミュニケーションにおける主体の問題、象 徴と思考の問題などを論ずる。
O. デュクロ、T. トドロフ、滝田文彦他訳『言語理論小事典』(Ducrot, Oswald & Todorov Tzvetan, Dictionnaire
Encyclopedique des sciences du langage, Paris, Ed. du Seuil, 1972)朝日出版社、1975年。
言語活動に関わる事項を網羅的に扱った百科全書的な事典。術語の一覧では なく、学派、分野 ごとに項目を立てて概説している。社会・心理・修辞・文体・ 詩学・記号論等の視点からも論究されている。
丸山圭三郎『ソシュールを読む』岩波書店、1983年。
近代言語学の父、記号論の祖と呼ばれるF. ドゥ・ソシュールの思想を解説す る。ソシュールと現代、ソシュールと人間学、ソシュールと文化記号論の章 など特に参照のこと。
グループμ、佐々木健一他訳『一般修辞学』(Le groupeμ, Rhetorique generale, Paris, Lib. Larousse,
1970)大修館書店、1981年。
作品を詩や文学たらしめている特殊性を言語表現の中に見い出そうとする試 み。隠喩、誇張、 反語、対照などの修辞学的な表現のメカニズムを言語学 的に解明しようとする。
朝倉季雄『フランス文法事典』白水社、1955年。
著者が長年収録した文例を諸学説を参照しながら自ら整理分析し、文法項目 をほとんど網羅し てアルファベット順に並べ、簡明に解説した文法辞典。 この形式の文典は他にない。
朝倉季雄『フランス文法ノート--基本語の用法』白水社、1981年。
初級文法で扱う基本語、基本構文であるのに我々がよく間違ったり疑問に思 ったりするものとりあげて、語学的視点から平易に解説した参考書。同著者 による姉妹篇『フランス文法覚え書』1967年、『フランス文法メモ』1984
年もある。
佐藤房吉『フランス語動詞論』白水社、1990年。
叙法と時制というフランス語の根本に触れる問題を論究した書。叙法論の中 でも特に接続法 を 論じた論文は特異である。
東京外国語大学グループ《セメイオン》『フランス語学の諸問題』三修社、1985年。
音韻論から統辞論、意味論また文体論から方言学、フランス語教育にいたる までをカバーして 、各分野の課題と研究方法を解説する。
大橋保夫他 『フランス語とはどういう言語か』駿河台出版社、1993年。
フランス語がもつ根本的特性を見た後、指示と照応、中性代名詞、受動態な どの問題から丁寧 語法、ナラトロジーに到るまで幅広い範囲をカバーしつ つ、フランス語の本質を探る。
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演習「フランス語言語学」
本演習はフランス語を対象としてその言語的メカニズムを追究する。フランス語とはどのような言語であるか、音(音声・音韻)、語(語彙・形態)、文構成(シンタクス・構文)、意味(さらには語用論)のレベルからその内部的仕組がどのようになっているか、素朴で具体的な疑問から出発してその特性を明らかにしようと試みる。
この演習では年度ごとに特定のテーマを掲げることはせず、下記のような問題を適宜とりあげて、先行論文を一緒に読んだり、担当者が解説したりする。受講者には各人の選んだテーマについて発表してもらい、質疑応答の後、皆でディスカッションをする。各自の研究は最終的にはゼミ論として提出してもらう。原則として、全学共通科目の「言語学入門I、II」、言語学副専攻の科目(少なくとも「言語学概論」)と、フランス語学研究AやBを履修した4年次生を対象にするが、3年次からも履修可能である(ただし人数次第であり、4年次を優先する)。
これまでに扱ったトピックス:
いわゆる「無音のe」はどのような音環境で起こるか、connaitreとsavoirの相違点、 entreとparmiの使い分け、Il est...とC'est...それぞれの使用条件、分詞構文とジェロンディフとの違い、虚辞のneとは---その特性、受動表現(受動態、代名動詞、on...)のそれぞれの特異性、受動態におけない他動詞の特性、もともと後置される形容詞が前置される場合(そこに込められる意図)、継続する動作が複合過去で表される場合、比喩やデノテーション/コノテーションの問題、主題化と焦点化、新情報と旧情報、など。
提出されたゼミ論・卒論の題のいくつか:
形容詞的用法におけるbonとbienの違いについて、quelques/plusieursの違いについて、定冠詞と不定冠詞による名詞の総称化--その用法と意味の違い、前置詞surの根源的意味について、 parce que, puisque, comme, carについての研究、depuis+Xと、現代フランス語動詞直説法時制との共起関係について、aller+infと単純未来形との違い、使役表現faire cuireとcuireの違い、非人称構文の成立条件、フランス語における敬意表現、など。
目を通しておいてほしい文献:
『フランス語とはどういう言語か』駿河台出版社、1993年。『フランス語学の諸問題』三修社、 1985年。
(南舘英孝)
言語と文化の関係を考えていく上ではさまざまなアプローチの仕方が考えられるが、ここでは言語学側のアプローチをとることを主に考えると、次の二つの学問分野が焦点となろう。
1)認知意味論
私達を取り巻く外界は単に私達の前に存在しているのではなく、その中で私達は生きている。つまり、私達は外界を認識し、解釈し、理解し、意味づけ、それに関わって生活をしている。このような外界の捉え方を認知という言葉で呼ぶとするならば、認知の過程は人間の言語の世界に大いに関わっているものである。
そのことは、外界の事象を言語で表現しようとすれば、それを生の形では再現できないことからも分かる。私達は言語を用いてそれを切り取り、取捨選択し、再構成しているのであり、そこには私達の側の観点が写し出されている。言語をこのような観点から研究することは、いわゆる学校文法をおぼえることとは非常に違うものだということをまず知る必要がある。言語研究は上のような意味で認知科学の一つなのであり、とりわけ言語と文化を考える上では、認知意味論といわれるものや、語用論が重要な分野となってくるのである。
ここでは、a) 人間の認知活動一般の傾向に関わること、b) その言語文化のあり方に関わること、 c) 話し手の意図による選択に関わることが問題になってくる。
フランス語をこのような観点から研究していくには、まず、一般言語学、とりわけ意味に関する基礎的な知識が必要となる。また、一般的なフランス語学の入門書を読む必要もある。
2)社会言語学
言語は記号体系として、人間の認知活動、コミュニケーションの道具であるとともに、社会的な存在でもある。たとえば、ある集団に帰属するという社会的なアイデンティティーには、どの様な言語のグループに話し手は属するか、といったことは重要な要素になる。いわゆる言語政策の問題、国(家)語と地方語、さらに社会階層、年齢、性別、職業と関係することばの位相、異なった言語・文化との接触による借用や言語の変容なども重要なテーマとなる。誰が、どこで、誰に対して、いつ、どのようなことを言うか、といった場面による言語形式の選択、書きことばと話しことば、などのテーマは言語形式の外部世界との関連を検討してはじめて明らかになる。このようなことを中心に研究するという場合には、社会言語学が主たるものとなるが、語用論、言語人類学、言語社会学、異文化コミュニケーション論といった学問も関連する重要な分野になってくる。
以下の文献では、日本語で読める書物を主とし、さらに少数、英語、フランス語で書かれたものを挙げておく。ごく基礎的なもの、また、多少専門的だが、学問的な刺激が大いに得られるものを目安とした。
1)に関連する文献
E. バンヴェニスト、岸本他訳『一般言語学の諸問題』(Benveniste, Emile, Problemes de linguistique generale,
Gallimard,1968)、みすず書房、1983年。
フランスの大言語学者による一般言語学の論文を集めたもの。新しい発想法 で言語を考える 端緒となった名著の翻訳。訳文が多少読みにくいのが難点。
A.ドーザ、杉富士雄他訳『フランス語の特質』(Dauzat Albert, Le genie de la langue francaise, Payot,1942)、大修館書店、1982年。
古典的なフランス語学の概説書。理論的な書物ではないが、現代的な言語学 以前のフランス語学の書として名著である。
C. フックス・P. ルゴフィック『現代言語学の諸問題』(Fuchs, C. et P. Le Goffic, Initiation aux problemes
des linguistiques contemporaines, Hachette,1977)、三修社、1983年。
一般言語学の概説書だが、類書と異なりフランスの言語学理論についての説 明が多く、便利である。
池上嘉彦『記号論への招待』岩波新書、1984年。
記号論入門の書。言語との関係がよくわかる。
------ 『意味論」大修館書店、1975年。
日本語で書かれた統一的な意味論の本格的な本。
------ 『「する」と「なる」の言語学』大修館書店、1981年。
言語と文化を深い層で考えた斬新な書物。
泉 邦寿『フランス語を考える20章--意味の世界--』白水社、1978年。
フランス語に関する意味論入門の書。
----- 『フランス語、意味の散策--日・仏表現の比較--』大修館書店、1989年。
上記の書の続きだが、フランス語の語用論的なトピックを扱った書。
----- 『フランス語の語彙と表現--一歩進んだ意味の世界--』バベル・プレス、1993年。
フランス語の語彙論・表現論の展開。文化的な事象との関連にも触れる。
G. Kleiber, La semantique du prototype, PUF,1990.
最近の認知言語学のプロトタイプ理論を、現代のフランス言語学者が解説し、 かつ批判した本。
国広哲弥『意味論の方法』大修館書店、1982年。
意味論の古典的な学説を批判的に検討して、筆者の意義素論を展開する。主 として日本語の例だが、方法を具体例にそって考えるのによい。
久野 ●『談話の文法』大修館書店、1978年。
独創的な日本人言語学者による談話文法の展開。文は平易だが、内容は濃く、 非常に刺激的な 書。言語学における独創性の見本のようなもの。
E.ライヅイ、鈴木孝夫訳『意味と構造』(Leisi, Ernst, Der Wortinhalt, Quelle && Meyer,
1961)、研究社、1974年。講談社学術文庫版もある。
ドイツ語と英語を例とした構造的な語彙論・意味論の本。具体的で非常に分 かり易く、今なお 得るところの多い名著の翻訳。訳文も読み易く。絶版だ ったが、最近、学術文庫に入って、入手し易くなったのはありがたい。
G.レイコフ、池上嘉彦他訳『認知意味論』(Lakoff, George, Woman , Fire and Dangerous Things, Cambridge
Univ. Press,1987)、紀伊国屋書店、1972年。
認知言語学的な立場からの本格的な意味論の本。言語学における認知的な立 場を知る為には必読書。
レイコフ&ジョンソン、渡部・楠瀬・下谷訳『レトリックと人生』(Lakoff, G. and M. Johnson, Metaphors We Live
By, The University of Chicago Press,1980)、大修館書店、1987年。
比喩というものが言語の本質に係わる重要なものであることが認知言語学の 立場から説かれている。
丸山圭三郎『ソシュールの思想』岩波書店、1981年。
------ 『ソシュールを読む』岩波書店、1983年。
構造言語学の祖と考えられるソシュールがそれ以上の思想家であったことを 実証した画期的 な書物。後者はソシュールの『一般言語学講義』を深く読 むためのよい手引き。
松原秀一『フランスことば事典』講談社学術文庫、1996年。
現代フランス語の文化的な背景について、碩学がやさしく説いた本。フラン ス語を支えている根の部分がよく分かる。
松原秀治・松原秀一『フランス語らしく書く--仏作文の考え方--』白水社、1995 年。
日本語とフランス語の発想の違いがよく分かる実践的であると同時に考えさせる本。とりわけ第2部「フランス語の考え方」が興味深い。
G.ムーナン『言語学とはなにか』(Mounin, Georges, Clefs pour la linguistique, Seghers,1969)、大 修館書店、1970年。
フランス人によって書かれた言語学入門の名著。原書も読みやすいので、フ ランス語で言語 学の本を始めて読む人に最適。
------ 伊藤他訳『意味論とはなにか』(Mounin, Georges, Clefs pour la semantique, Seghers,1972)、大修館書店、1975年。
理論的にはもう古いが、構造的意味論入門の本としてはフランス語の具体例 も多く、よい。原書の方が読みやすい。
------ 伊藤他訳『ソシュール』(Mounin, Georges, Ferdinand de Saussure ou le structuraliste
sans le savoir, Seghers,1968)、大修館書店、1970年。
構造言語学の祖としてのソシュールをその文章の抜粋と共に解説した本。原 著もそう難しくはない。ソシュールの本を読む前に読んでおくと分かり易い。
日本フランス語学会編『フランス語学研究』、日本フランス語学会、1968年〜。
日本のフランス語学研究の中心的な雑誌。巻末にその年の世界の主要な学術 雑誌のフランス語に関する主要論文の目録が載っていて便利。図書館にあり。
大橋保夫他『フランス語とはどういう言語か』駿河台出版社、1993年。
フランス語学の考え方がよく分かると共に、現在のトピックや理論について もかなりの程度 知ることができる本。
B. ポティエ、三宅・南館訳『一般言語学』(Pottier, Bernard, Linguistique generale, Klinksieck,
1974)、岩波書店、1984年。
現代フランスの言語学者による独自の言語理論。概念から出発していかに言 語化がなされるかという発想で構想された理論。
Pottier, Bernard, Theorie et analyse en linguistique, Hachette,1992.
前記の書物の次ぎに出版されたもの。かなりの理論的な発展が見られる。
鈴木孝夫『ことばと文化』岩波新書、1972年。
ことばと文化の関係を知ろうと思う人には非常に刺激的で面 白い。大変読みやすいが、内容は濃い。最後のものは最新の本だが,著者 が考える言語学がどういうものか を知るのに最適である.独創性のある言
語学者による本。
------ 『ことばの人間学』新潮文庫、1981年。
ことばと文化の関係を知ろうと思う人には非常に刺激的で面 白い。大変読みやすいが、内容は濃い。最後のものは最新の本だが,著者 が考える言語学がどういうものか を知るのに最適である.独創性のある言
語学者による本。
------ 『日本語と外国語』岩波新書、1990年。
ことばと文化の関係を知ろうと思う人には非常に刺激的で面 白い。大変読みやすいが、内容は濃い。最後のものは最新の本だが,著者 が考える言語学がどういうものか を知るのに最適である.独創性のある言
語学者による本。
------ 『日本語と外国語』岩波新書、1990年。
------ 『教養としての言語学』岩波新書、1996年。
Tamba-Mecz, Irene, La semantique, Collection Que sais-je?, PUF, 1988.
フランス語で書かれた意味論入門の本だが、ムーナンのものより新しい理論 や考え方が入っていて興味深い。著者は日本語学にも通じているので、一般 の西洋の言語学者にない発想をする。文章はやや難しい。
田中克彦『言語学とは何か』岩波新書、1993年。
社会言語学的視点から言語学というものをとらえ直そうとする本で、言語学 とは何かを考えるのによい。生成文法批判の書でもある。
J.R. テイラー、辻 幸夫訳『認知言語学のための14章』(Taylor, John R., Linguistic Categorigation -
Prototypein Linguistic Theory) 紀伊国屋書店、 1996年。
カテゴリー化とプロトタイプ論を中心に最近の認知言語学の考え方を詳述し、 なお批判もしてある書で、認知意味論の考え方をするには最適の書。
Wiertzbicka, Anna, Semantics, Culture and Cognition, Oxford Univ.Press,1992.
ポーランド生まれで、現在オーストラリアで教鞭をとっている幅の広い意味論学者による、意味、認知、文化についての論。
2)に関する文献
Ball, Rodney, The French Speaking World A practical introduction to sociolinguitic
issues, Routledge, 1997.
フランス語とフランス語が話されている地域についての入門書。社会言語学の具体的な入門にもなる。練習問題もついて自習向きにもなっている。
Anger, Dennis, Sociolinguistics and Contemporary French, Cambridge Univ. Press, 1990.
社会言語学の理論の概説とその具体的なフランス語への適用の書物。初学者 用にできた本。
Calvet, Louis-Jean, L'Europe et ses langues, Plon,1993.
欧州統合と言語の問題を言語政策論の立場から論じた書。
デル・ハイムイズ、唐須教光訳『ことばの民族誌--社会言語学の基礎』(Dell Hymes, Foundations in Sociolinguistics,
1974.)、紀伊国屋書店、1979年。
民族学的な視 点から社会言語学の問題を捉えた書物。
H. ジオルダン、原聖訳『虐げられた言語の復活』(Giordan, Henri (ed), Pour les langues de France,
Centre Georges Ponpidou,1984)、批評社、1987年。
フランスにおける地域語、地方語の抑圧の歴史と復権の動きを解説、報告したもの。
Giordan, Henri (sous la direction de), Les minorites en Europe, Editions Kime,
1992
ヨーロッパの少数言語の現状と問題を主として言語社会学の立場から論じた大部の論文集。
Hagege, Claude, Le francais et les siecles, Collection Points,1987.
フランス語の歴史と国家との関係を時代思潮を踏まえて考察した本。
泉 邦寿「フランス語の内と外1〜12」『ふらんす』白水社、1994年4月〜1995年3月。
フランス語を取り巻く現在の状況をヨーロッパとフランスの政治・社会的変 化との関係から捉えたもの。言語社会学的な視点。
梶田孝道『新しい民族問題』中公新書、1993年。
世界的な規模で顕著に見られる新しい民族問題を、国際社会学的見地から分 析し考察したもの。
梶田孝道『統合と分裂のヨーロッパ』岩波新書、1993年。
EUに見られるような統合の一方で、旧ユーゴに見られる様な分裂もあるとい う現代のヨーロッパの問題を国際社会学の見地から検討した好著。言語問題 にも触れる。
F. クルマス、山下公子訳『言語と国家--言語計画ならびに言語政策の研究--』岩波書店、1987年。
言語政策の基本的な問題を考える上で便利。
-----、諏訪他訳『ことばの経済学』大修館書店、1994年。
言語問題を経済的な問題と関係づけてとらえる試み。
Lodge, R. A. , Le francais Histoire d'un dialecte devenu langue, Fayard, 1997.
フランス語の歴史をとりわけ社会言語学的視点から書いたもの。一般人を対象に書かれているので、読みやすい。原本は英語。(French, from Dialect
to Standard, Routledge)
宮島 喬『ひとつのヨーロッパ・さまざまなヨーロッパ』東大出版、1992年。
国際社会学者のフランスを中心とした論集。言語問題に多く言及している。
宮島喬・梶田孝道編『現代ヨーロッパの地域と国家』有信堂、1988年。
-------『統合と分化のなかのヨーロッパ』有信堂、1991年。
現代ヨーロッパの動きを地域、国家、超国家のダイナミズムの観点から捉え る論集。言語問 題に触れるものも多く含まれている。
三浦信孝編『多言語主義とはなにか』藤原書店、1997年。
一言語、一民族、一国家という形の国民国家のあり方が世界で問われて来ているが、世界の多言語のあり方をさまざまな方面から取り上げ、多言語という発想の豊かさを示している刺激的な論集。
Muller, Bodo, Le francais d'aujourd'hui, Klincksieck,1985.
現代フランス語の現状を、その内部構造の仕組みだけでなく、時間・空間・社会的な広がりをも踏まえて分析し、説明した総合的な良書。ドイツ人の学者によって書かれた本の仏訳。
野村雅一『しぐさの世界』NHKブックス、日本放送出版協会、1983年。
------ 『ボディランゲージを読む』平凡社、1984年。
いわゆるノン・バーバル・コミュニケーションのうち、しぐさや身振りについについての論考。世界のさまざまな例を見ながら、これらをどの様に構造化するかを考える。
Offord, Malcolm, Variety of Contemporary French, Macmilan, 1990.
現代フランス語の社会・地域による変異を学生向けに説明し、練習問題もつけた本。英国人学生のための本だが、日本人学生にも大変役に立つ。
----- French Sociolinguistics, Multilingual Matters LTD, 1996.
フランス語とフランス、フランスの地域語、フランス以外のフランス語、フランス語とジェンダーなどについてのこれまでの書物、論文からの撰文集で便利。
小川秀樹『ベルギー ヨーロッパの見える国』新潮選書、1994年。
連邦国家となったベルギーという国を知るのに最適な本。
鈴木孝夫『武器としてのことば』新潮選書、1985年。
日本人には馴染みが薄いが、世界的には当然の如くになっている交渉の武器として考えられることばについての考察。
------ 『ことばと社会』中央公論社、1975年。
著者の言語社会学的な論文や小論を集めたもの。
------ 『ことばの社会学』新潮文庫、1991年。
著者の言語社会学的な論文や小論を集めたもの。
田中克彦『ことばと国家』岩波新書、1981年。
ことばと国家との関係を社会言語学の立場から論じたもの。フランスについての論及もある。
田中克彦・ハールマン, H.『現代ヨーロッパの言語』岩波新書、1985年。
現代ヨーロッパの言語状況についての解説。はじめの導入部の論考も面白く、便利な本である。
唐須教光『文化の言語学』勁草書房、1988年。
言語学と文化の問題をどうとらえるかを考える概説書。
H, トラッドギル、土田滋訳『言語と社会』(Tradgill, H., Sociolinguistics, An Introduction, Penguin
Books,1974)、岩波新書、1975年。
社会言語学の基本的な考え方を具体的な例を通じて説明した入門書。
ネウストプニー, J. V. 『外国人とのコミュニケーション』岩波新書、1982年。
異文化間コミュニケーションを社会言語学的観点から捉えて、日本語と日本人を考えたもの。
Vermes, G. et J. Boutet, France pays multilingues, Tome 1, 2, L’Harmattan,
1987.
フランスにおける少数言語の実態と言語政策を知るのに便利な書。
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演習「言語と文化」
人間とそれが生み出した文化について、言語を切り口にして研究することを目指すのがこのゼミの目的である。もちろん、ここで問題とする言語はフランス語を主とするが、日本語や英語をあわせて対象とすることも多い。
ここでは、言語内の問題と言語外の問題、そしてその両方の関係が問題となるが、そのどこに重点を置くかによって研究は分かれてくる。
前期は皆で文献を読みつつ、方法とテーマを検討するが、以下のどちらに焦点を置くかは年度によるか、受講者の希望によって決めている。なお、後期は各自のテーマによる研究を発表し、ゼミ論文あるいは卒業論文を作成することになる。
1)言語内の問題に重点をおく場合
外界の事象を言語で表現するとき、それを切り取り、取捨選択し、再構成しているのであり、そこには私達の側の観点が写し出されている。ここではそのような立場を踏まえてフランス語と日本語を対照して研究していくが、言語学の分野でも、特に意味論、語用論、発話理論の問題が対象となる。具体的には、語彙の意味比較、表現の比較、場面やテキストに於ける問題、呼びかけのことば、つなぎのことば、人称の問題、比喩、挨拶、さらには、視覚的な情報との関係なども対象としてきた。すでに出来上がった言語形式を比較するだけではなく、認知のプロセス自体からこれを考えることが必要となり、各言語では何が言語化され、何がされないのかということも対象の一つとなる。
2)言語と言語外の事象との関係に重きをおく場合
社会的な存在としての言語を、ある集団に帰属するという社会的なアイデンティティーの問題と関連させ、いわゆる国(家)語、地域語、方言、公用語などをとおして考えていく。欧州統合と言語問題、フランスをはじめ、その他の国々の言語政策などもテーマとなる。また、社会階層、年齢、性別、職業などによることばの相違や、個人がどの様な状況の下でどのような言語形式を選択するかといった問題、待遇表現、さらには社会変動と言語の問題、コミュニケーション・ギャップの問題も対象となる。広く言語記号を取り巻く文化・社会現象を検討していく。
前もって、あるいは合わせて履修することが望ましい科目には次のようなものが考えられる。
1)2)共通:
言語学入門、言語学概論、意味論、社会学、文化人類学、フランス語学研究A.B、日本語学概説
1):
認知科学、文法論、言語と哲学、フランス思想
2):
社会学、社会言語学、フランス文化研究 B, C、現代フランス社会研究、フランス政治研究、ヨーロッパ関係の科目
これまでの主な卒論・ゼミ論題目
「日本語になったフランス語(外来語について)」
「フランス語における恋愛のメタファー」
「フランス語の中に入った英語」
「和製英語と仏製英語の考察」
「言語のリズムと音楽のリズムの関連性についての比較研究」
「<音>の表現の日仏比較--オノマトペを中心として--」
「色感の日仏比較」
「色彩語の研究」
「日仏諺比較」
「フランス人の動物観研究」
「月のイメージの日仏比較」
「体に関することわざの日仏比較」
「フランス語会話におけるつなぎの言葉」
「非言語コミュニケーションにおける日仏比較研究」
「フランスの幼児教育を通してみる言語観」
「日本文化におけるフランス語とその誤用」
「開国時のフランス語研究」
「マンガにおける日仏感情表現の違い」
「『翻訳調』の一端を探る--日仏語対照--」
「慣用表現からみた言葉のカテゴリー:右と左、droitとgauche」
「フランス語の対称詞に関する解釈の違いについて」
「フランスにおける料理に関する語彙場の形成について」
「ネーミング--の会話に現れる呼称表現の分析」
「谷崎潤一郎「細雪」のフランス語訳における
待遇表現(呼称法)の観察とその問題点」
「地口とcalembourについて」
「フランス人の挨拶行動」「挨拶の研究とその日仏比較」
「日仏語併用時の談話におけるcode switching」
「Le francais en Afrique subsaharienne」
「多言語使用国家・ベルギーにおける言語問題」
「デクソンヌ法について」
「ジェロンディフにおける副詞toutの働きについて」
「フランス語に起源」
「少数言語の復権運動はなぜ行われるのか雑誌に見る
化粧品広告のキャッチフレーズの日仏比較--レトリックを中心として」
「フランス言語純粋主義について」など。
(泉 邦寿)
フランス語学科でおこなっている地域研究は、フランスおよびフランス語圏諸国の文化・文明を形成するさまざまな事象、すなわち気候風土、言語、文学、思想、美術、歴史、政治、経済などについての個別研究をおこない、さらにこれらの研究の成果を総合することによってフランスやフランス語圏諸国についての認識をより深めようとするものである。こうした研究をすすめるにあたってもっとも重要なことは、各学問領域の個別研究をたがいに関連づけて集大成する視点をもつことであろう。また研究者には、問題意識と発想を豊かにし、学問領域の間仕切りをとり払って新しい方法論を学ぶ努力が求められることになる。
たとえばフランス経済の研究においても、これまで主流となっていた数理的方法論にくわえて、人間の消費行動を意識の深層部で動機づける[もの]の記号体系を解きあかすために経済人類学や経済記号学、さらには精神分析の方法論までもがとり入れられている。また社会学の分野でも、伝統的に用いられてきた統計学の方法にくわえて記号論やポスト構造主義の理論が援用されている。
文学研究についても、これとおなじようなことがいえよう。フランスにおける記号学の発展のために指導的役割をはたしたロラン・バルトは、文学のテクストは時代と人間によってつくられた[織物]であるといっている。わたしたちはみな、わたしたちをとりかこむ時代の枠組み、つまり社会の道徳的規範や政治的・経済的制度の影響からのがれることはできない。したがって、それが詩であれ小説であれ、あるいは哲学的著作であれ、およそことばによって書かれたテクストは、その文章を書いた人間の精神をたて糸とし、かれが生きた時代の精神をよこ糸として織りなされているものであり、だからこそ、あらゆるテクストは書かれたその瞬間から、著者個人から自立して一民族全体の歴史的証言になるというのである。
そうであるとすれば、文学のテクストは政治的事件や経済的現象とおなじように、ある地域の社会構造や文化の質を解明するためにきわめて有効な資料になるはずである。文学研究者のあるグループはこうした観点から、社会学の方法論を用いて小説を読み、主人公の行動に反映した社会的タブーや、その時代が理想とした人間像をさぐろうとした。また精神分析学を応用した研究者たちは、文学作品のなかに作家の無意識領域に内在して創作活動の源泉となる心的傾向、作家の「個人神話」とでもよぶべきものとともに、すべての人間に共通する普遍的な神話構造、ユングのいう「集団的無意識」を読みとることができると考えたのである。
テクストを解読するための方法も多岐にわたっている。各研究者は、それぞれの採用する方法論にしたがって、頻出するイメージや中心的テーマを抽出してテクストの美学的側面に光をあてたり、テクストを歴史的、社会的、政治的に位置づけたり、あるいはまた、テクストの隠れた神話構造をあきらかにするために記号分析をおこなう。こうしてテクストにはさまざまな角度から解釈がくわえられ、ひとつのテクストがいくつもの意味作用をもつことがあきらかになる。こうしたテクストの解読作業そのものが、とりもなおさず地域研究の一環としての文学研究のありかたなのである。
では、そうした文学研究の対象となるテクストをどのようにして選択したらよいのだろうか。まずなによりも、できるかぎり多くの文学作品を読むことである。その過程で諸君は、みずからの問題意識につよく訴えかけるテクストとめぐり会うはずである。自由にフランス語を読みこなすだけの読解力を身につけるまでは、諸君は日本語に翻訳されたものによってフランス文学に触れることになろう。いずれフランス語の原文を読むときもそのテクストを自分なりの日本語に翻訳して読むわけであるから、それが優れた翻訳であるならば、翻訳で文学作品を読むことをためらう必要はない。そして世界に冠たる翻訳王国の日本では、フランスの重要な作家の作品はほとんどすべて翻訳されているといっても過言ではない。各作家の個人全集や単行本、文庫本を自分で見つける努力をしてほしい。
絵画、音楽、建築、彫刻などの芸術作品もまた、詩や小説、あるいは哲学的著作などの言語テクストとおなじように、各作品を生んだそれぞれの時代の精神を映しだすテクストである。
文学批評における「受容理論」研究は、ほんらい不確定な要素にみち、さまざまな、ときには相矛盾する解釈をも許容する文学作品が自己完結的な存在ではなく、読者の側の積極的な参加によってはじめて十全なかたちで存在しうるということをあきらかにした。読者は読書をつうじて、多様な意味をもち、先行するすべてのテクストと相互に関連しあう動的な素材としてのテクストを、自分なりのやりかたで作品として具体化する。こうして読み解かれたテクストは、さらに同時代と次代のテクストにたいして開かれたものとなるのである。
文学作品のダイナミックな受容理論は、言語芸術以外の芸術作品についても適用できよう。すぐれた芸術家は、同時代の記号体系を異化し、人々の美意識につよい刺激をあたえる作品を生産することによって、あたらしい美を生みだす。そのとき、芸術家の意識はつねに時代の精神にわずかに先んじているだろう。しかし、かれらの作品が同時代の知的および美的パラダイムからおおきく乖離することはないはずである。なぜなら芸術作品も、すべての生産物とおなじ「消費物」であり、消費されるためには、作品は消費者のもつ文化的コードの枠内にとどまらなくてはならないからである。一方、芸術作品の受け手としての大衆は、みずからのうちに潜在する希求や趣味を具体化し、ひいてはかれらが生きる時代の精神を表現しうる芸術を識別して、これを受け入れるのである。
たとえば、16世紀後半から17世紀後半のフランスで、絵画や建築ばかりではなく、演劇や文学の領域においても支配的な表現手段となった主情的で動的なバロック様式は、主知的で静的な古典主義へのアンチ・テーゼとして登場したものであった。その背景には、プロテタントの宗教改革によって中世以来の安定した宗教的統一が崩壊するなかで、コペルニクスやガリレオによってもたらされた科学的世界観にふれた当時の人々が、変動する世界にたいしていだいた不安や、束の間の命をおびやかす死への怖れがあった。
また、19世紀後半においてフランス絵画の主潮となった写実主義は、当時の人々が科学に対していだいていた素朴な信頼や時代精神としての実証主義哲学に裏打ちされているし、客観的な写実主義から出発しながら、しだいに主観的色彩をつよめてゆく印象派の画家たちをつき動かしていたのは、硬直化した科学万能主義への反感と生き生きとした生命の躍動感を表現したいという欲求であった。
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フランス文学
1)文学史・文学辞典
『フランス文学講座』全6巻 大修館、1979年。
小説、詩、演劇、思想、批評のジャンルごとに各分野の専門家が詳述。
渡辺・鈴木『フランス文学案内』岩波文庫、1961年。
文学史上の重要な作家と作品を簡潔に紹介。ぜひ手もとにおいておきたい一冊。
河盛・平岡・佐藤『フランス文学史』新潮社、1967年。
各世紀の文学を、その時代背景とともに考察する。もっとも充実した文学史。
篠沢秀夫『フランス文学講義』全3巻 大修館、1988年。
軽妙な語り口による名講義録。
饗場・朝比奈『フランス文学史』白水社、1979年。
読みやすい文章。通読して文学史を俯観しておきたい。
渡辺一夫『曲説フランス文学』筑摩書房、1950年。
フランス文学に通底するヒューマニズムに注目した名著。
V. C. ソーニェ、小林他訳『世紀別フランス文学』全5巻、クセジュ文庫、白水社、1964年。
的確な小見出しが豊富についている。内容は高度。
M. シュネデール、渡辺他訳『フランス幻想文学史』国書刊行会、1987年。
重要な作品を紹介しながらフランス幻想文学の系譜をたどる。
P. ボワデッフル、平岡他訳『今日のフランス作家たち』クセジュ文庫、1967年。
二次大戦中から戦後にかけて作家たちがどのように時代に関わったかを記述。
稲生 永『「フランスの歴史と文学』大修館、1979年。
文学作品を生んだ歴史背景と各地方の気候風土を多くの写真と図版でしめす。
日本フランス語フランス文学会編『フランス文学辞典』白水社、1974年。
内容、収録項目数とももっとも充実。
2)ジャンル別文学史
[小説]
P. ボワデッフル、望月訳『小説はどこへ行くか』講談社、1963年。
戦後の文学界において小説がしめる位置を確定しようとした力作。
R. M. アルベレス、豊崎訳『現代小説の歴史』新潮社、1965年。
プルースト以後の主要な小説作品を紹介。
R. M. アルベレス、豊崎訳『小説の変貌』紀伊国屋書店、1968年。
伝統的小説からヌーボー・ロマンまでの流れをおったもの。
M. ナドー、篠田訳『現代フランス小説史』みすず書房、1976年。
20世紀の重要な小説について詳述。
B. ミシェル、松崎他訳『ヌボー・ロマン論』紀伊国屋書店、1966年。
ヌーボー・ロマンの作家たちについての入門書。
A. ティボーデ、生島訳『小説の美学』人文書院、1976年。
フランス文学における小説の概念を分析。基礎的な参考文献。
A. ティボーデ、石崎他訳『フランス小説の現在』高文堂、1982年。
J. P. シュヴェイアウゼール、平岡訳『ロマン・ノワール』クセジュ文庫、1991年。
現代フランスにおける探偵・冒険小説を詳しく紹介。
[詩]
窪田般弥編『フランス詩大系』青土社、1989年。
各世紀の主要な詩人の作品を数編ずつ選んで訳出したもの。
P. ボワデッフル、平岡他訳『今日のフランス作家たち』クセジュ文庫、白土社、1975年。
M. レイモン、平井訳『ボードレールよりシュールレアリスムまで』 昭森社、1974年。
詩学研究の碩学がフランス近代詩の歩みを跡づけた古典的名著。
R. ラルー、小松他訳『フランス詩の歩み』クセジュ文庫、1955年。
19世紀から第二次大戦前夜までのフランス詩の歴史を要領よくまとめたもの。
A. M. シュミット、清水他訳『象徴主義』クセジュ文庫、1969年。
マラルメの影響下に展開したシュールレアリスムの歴史。
M. ナドー、稲田訳『シュールレアリスムの歴史』思潮社、1966年。
[演劇]
岩瀬孝他『フランス演劇史概説』早稲田大学出版、1978年。
G. セロー、中条訳『ヌウヴォ・テアトルの歴史』思潮社、1986年。
川島順平『フランス演劇とその周辺』駿河台出版社、1986年。
クローデルとジロドゥーの演劇についての考察。
渡辺守章『虚構の身体』中央公論社、1978年。
フランス演劇研究の第一人者がラシーヌ、クローデル、アルトーらの作品を めぐって展開する刺激的な演劇論。
梅本洋一『視線と劇場』弘文堂、1987年。
藤井康生『幻想劇場』平凡社、1988年。
風間 研『パリの芝居小屋から』筑摩書房、1987年。
もっとも新しいパリの演劇情報。
諏訪 正『ジュヴェの肖像』芸立出版、1987年。
ルイ・ジュヴェの生涯をとおして今世紀前半のパリ演劇界を活写する。
本庄桂輔『サラ・ベルナールの一生』新潮社、1972年。
[批評および文学理論]
G. プーレ編、平岡訳『現代批評の方法』理想社、1974年。
複数の批評家による実践的方法論。
P. ブリュネル他、平岡他訳『文芸批評の新展望』クセジュ文庫、1985年。
文学批評のかかえるさまざまな問題をあざやかな切り口で摘出。
R. ファイヨル、大野他訳『フランス文学と批評』三修社、1986年。
サント・ブーブから今日にいたる批評の流れ。
カルローニ、フィルー、平岡訳『文芸批評』クセジュ文庫、1956年。
19世紀の伝統的批評から現代のヌーベル・クリティクまでの歴史を簡潔に記述。
T. イーグルトン、大橋訳『文学とは何か』岩波書店、1985年。
欧米の現代批評理論を網羅的に紹介し、これに詳細な解説をくわえる。
筒井康隆『文学部唯野教授』岩波・同時代ライブラリー、1993年。
印象批評からポスト構造主義批評にいたる批評の方法論を大学の講義のかたちで論述。
田辺他編著『文芸批評を学ぶ人のために』世界思想社、1994年。
現代のさまざまな文学研究法をとりあげ、その有用性と限界を実践例にもとづいて検証する。
J. I. タディエ、牛場他訳『二十世紀の小説』大修館、1995年。
N. フライ、海老根他訳『批評の解剖』法政大学出版局、1980年。
L. ゲーリン他、日下他訳『文学批評入門』彩流社、1986年。
G. パシュラール、小浜他訳『水と夢』国文社、1969年。
G. パシュラール、前田他訳『火の精神分析』せりか書房、1983年。
G. プーレ、丼上他訳『人間的時間の研究 I・II』筑摩書房、1977年。
G. ブーレ、山路他訳『プルースト的空間』国文社、1975年。
J.-P. リシャール、有田訳『詩と深さ』恩潮社、1995年。
J. スタロパンスキー、大浜訳『活きた眼』理想社、1971年。
J. ルーセ。伊東他訳『フランスパロック期の文学』筑摩書房、1970年。
川上勉編『現代文学理論を学ぷ人のために』世界思想社、1994年。
B. ウエレ他、柏木他訳『小説の世界』駿河台出版社、1993年。
W. ミッチェル、海老根訳『物語について』平凡社、1987年。
松浦寿輝編『文学のすすめ』筑摩書房、1996年。
前田愛『文学テキスト入門』筑摩書房、1988年。
土田・神郡他『現代文学理論』新曜社、1996年。
石原・木股他『読むための理論』世織書房、1994年。
川本・小林編『文学の方法』東京大学出版会、1996年。
小林・船曳編『知の技法』東京大学出版会、1996年。
U. ブロップ、北岡他訳『昔話の形態学』白馬書房、1983年。
T. トドロフ、菅野他訳『小説の記号学』大修館書店、1983年。
R. パルト、花輪訳『物語の構造分析』みすず書房、1979年。
R. パルト、沢崎訳『S/Z』みすず書房、1973年。
A. グレイマス、田島他訳『構造意味論』紀伊国屋書店、1988年。
A. グレイマス、赤羽訳『意味について』水声社、1992年。
Y. ロトマン『文学と文化記号論』岩波現代選書、岩波書店1979年。
G. ジュネット、花輪他訳『物語のディスクールー方法論の試み』水声社、1985年。
G. ジュネット花輪他訳『フィギュールI.11.1II』水声社、1985年。
U. エ一コ、池上訳『記号諭I.1l』岩波・同時代ライブラリー、1980年。
J. デリダ、若桑他訳『エクリチュールと差異I.II』法政大学出版局、1977年。
J. クリステヴァ、赤羽他訳『ポリローグ』白水社、1986年。
花輪光編『詩の記号学のために』水声社、1985年。
E. バンヴェニスト、岸本訳『一般言語学の諸間題』みすず書房、1983年。
R. ジラール、古田訳『欲望の現象学』法政大学出版局、1984年。
中条省平『小説家になる!』メタローグ、1995年。
S. グリーンブラット、高田訳『ルネサンスの自己成型』みすず書房、1992年。
P. ブルデュー、石井訳『芸術の規則I, II』藤原書店、1995年。
Y. Reuter, Introduction a l'analyse du roman, Bordas, 1991.
A. Niel, L'analyse structurale des textes, J. P. Delarge, 1976.
C. Fromilhague, Introduction a l'analyse sty1istique, Bordas, 1991.
J. Rohou, Etudes litteraires - Mehodes et Perspectives, Nathan, 1993.
J. Biard, Didactique du texte litteraire, Nathan, 1993.
3)個人全集
[小説]
『ネルヴァル全集』全3巻、筑摩書房、1975年。
『バルザック全集』全26巻、東京創元社、1973年。
『スタンダール全集』12巻、人文書院、1968年。
『フローベール全集』全11巻、筑摩書房、1968年。
『モーパッサン集』世界文学大系47、筑摩書房、1971年。
『プルースト全集』全16巻、筑摩書房、1985年。
『ヴァレリー全集』全14巻、筑摩書房、1967年。
『ジード集』世界の文学36、中央公論社、1994年。
『ロマン・ロラン全集』全43巻、みすず書房、1981年。
『モーリヤック著作集』全6巻、春秋社、1982年。
『ベルナノス著作集』全6巻、春秋社、1976年。
『マルロー集』世界文学大系72、筑摩書房、1975年。
『サン・テグジュペリ著作集』全12巻、みすず書房、1983年。
『サルトル著作集』全33巻、人文書院、1966年。
『カミュ全集』全10巻、新潮社、1972年。
[詩]
『ユーゴー詩集』、潮出版社、1984年。
『ボードレール全集』全6巻、筑摩書房、1983年。
『ヴェルレーヌ集』世界文学大系48、筑摩書房、1975年。
『ランボー全集』全3巻、人文書院、1978年。
『マラルメ全集』全5巻、筑摩書房、1991年。
『アンドレ・ブルトン集成』全7巻、人文書院、1971年。
『エリュアール詩集』、思潮社、1966年。
『アポリネール全集』全4巻、青土社、1979年。
『アンリ・ミショー全集』全4巻、青土社、1987年。
[演劇]
『コルネイユ名作集』、白水社、1975年。
『ラシーヌ集』世界古典文学全集48、筑摩書房、1965年。
『モリエール全集』全3巻、中央公論社、1981年。
『今日のフランス演劇』全5巻、白水社、1969年。
『ジロドゥ戯曲全集』全6巻、白水社、1957年。
『アヌイ作品集』全3巻、白水社、1969年。
[フランス絵画]
高階秀爾『フランス絵画史』講談社学術文庫、1990年。
文庫本ながら充実した内容。フランス絵画の流れを一望するためには最適の書。
高階秀爾『近代絵画史』全2巻、中公新書、1975年。
フランスの絵画についても多くのページがさかれている。
ジャン・クレイ、高階秀爾監訳『ロマン派』中央公論社、1990年。
ジャン・クレイ、高階秀爾監訳『印象派』中央公論社、1987年。
上記二冊では、豊富な作品の図版にそってロマン派と印象派について具体的で的確な解説がくわえられている。大部ながら読みやすく、しかも内容は高度。
L. バリルリ、宮川訳『フランスにおける象徴主義』平凡社、1974年。
M. セリュラス、平岡他訳『印象派』クセジュ文庫、1992年。
A. マルティーニ、久保他訳『フランス印象派』平凡社、1976年。
飯田昌平『バルビゾンの画家たち』美術出版社、1982年。
ミレーやルソーなど、バルビゾン派の画家たちの生活をえがく。
岡鹿之助『フランスの画家たち』中央公論社、1984年。
M. サヌイエ、安堂他訳『パリのダダ』白水社、1979年。
岡部あすみ『アートフィールド、フランス現代美術』スカイドア社、1992年。
この分野の研究書としてはもっとも優れた一冊。
高階秀爾監修『NHKルーブル美術館』全7巻、日本放送出版協会、1985年。
高階秀爾監修『NHKオルセー美術館』全6巻、日本放送出版協会、1990年。
A. プルースト、野村訳『マネの想い出』美術出版社、1983年。
F. フォスカ、幸田訳『ルノワール』美術出版社、1986年。
岡谷公二『アンリ・ルソー 楽園の謎』新潮選書、1984年。
B. ダニエルソン、中村訳『タヒチのゴーギャン』美術出版社、1987年。
藤村 信『ゴッホ 星への旅 上・下』岩波新書、1989年。
ゴッホという強烈な個性に魅せられた著者の熱い思い。
嘉門安雄『ゴッホとロートレック』朝日選書、1986年。
たがいに深く理解しあった二人の芸術家。当時のパリ絵壇事情が興味深い。
C. マン、田中訳『アメデオ・モディリアーニ』パルコ出版、1987年。
[フランス音楽]
N.デュフルク、遠山他訳『フランス音楽史』白水社、1972年。
皆川達夫『西洋音楽史』音楽之友社、1986年。
フランス音楽についても多くのページがついやされている。
B. シャンピニュール、吉田訳『音楽の歴史』クセジュ文庫、1988年。
ヨーロッパ音楽の歴史を俯観するためには最適の書。
E.ヴルタール、飛幡訳『フランス六人組』昌文社、1989年。
同時代の画家や作家たちと六人組の交流から六人組の音楽的意義まで縦横に論述。
磯田健一郎『近代・現代フランス音楽入門』音楽之友社、1991年。
サティからブーレーズまで23人の音楽家について、人と作品を簡潔に紹介。ポケット・ブックながら内容は充実している。
E. ルテール、小松他訳『フランス歌曲とドイツ歌曲』クセジュ文庫、1963年。
F. ヴェルニャ他、横山訳『シャンソン』クセジュ文庫、1973年。
蘆原英了『シャンソンの手帖』新宿書房、1985年。
第一章でシャンソンの歴史をふりかえったあと、著者の心にふれたシャンソンについての思い出をつづったもの。
林田遼右『ベランジェという詩人がいた』新潮社、1994年。
フランス革命期にあらわれたシャンソンの先駆者ベランジェの魅力。
J. ルスロ、横山訳『ベルリオーズ』音楽之友社、1975年。
M. カルドーズ、平島他訳『ビゼー“カルメン”とその時代』音楽之友社、1989年。
ビゼーの書簡を読みながら、作曲家の生きた時代をいきいきとえがく。
Ph.フォーレ・フルミエ、藤原訳『フォーレ その人と芸術』音楽之友社、1972年。
ヒルスブルンナー、吉田訳『ドビュシーとその時代』西村書店、1992年。
R. ニコルス、渋谷訳『ラヴェル』泰流社、1987年。
秋山邦晴『エリック・サティー覚え書』青土社、1990年。
熱烈なサティー賛歌。サティーの全作品について綿密なノートがそえられている。
C. サミュエル、戸田訳『オリヴィエ・メシアン その音楽的宇宙』音楽之友社、1993年。
メシアンと著者の対話が興味深い。
[フランス映画]
田山力哉『フランスの映画作家たち』白水社、1982年。
ルノワールからゴダール、トリュフォーなどフランス映画の黄金時代をきずいた人々。
H. アジェル『映画の美学』クセジュ文庫、1958年。
映画を芸術の重要な一分野として位置づけたもの。
渡辺 淳『スペクタクルの60年代』平凡社、1987年。
飯島 正『ヌーヴェル・ヴァーグの映画大系』冬樹社、1980年。
M. マルタン『フランス映画1943〜現代』村上訳、合同出版、1987年。
J. L. ゴダール、奥村訳『ゴダール映画史・・・』筑摩書房、1982年。
映画史の記念碑となるヨーロッパとアメリカの映画作品についてゴダールが語る。
ドゥーシェ、ナドー、梅本訳『パリ・シネマ』フィルム・アート、1987年。
映画の都パリとパリで活躍する監督・俳優たち。
山田宏一『わがフランス映画誌』平凡社、1991年。
思い出にのこるフランス映画について語りながら、ルノワールからヌーヴェル・ヴァーグまでのフランス映画史を跡づける。
山田宏一『トリュフォー』平凡社、1991年。
山田宏一『トリュフォー』平凡社、1991年。
R. ラウド、柄谷訳『ゴダールの世界』竹内書店、1969年。
A. バザン、奥村訳『ジャン・ルノワール』フィルム・アート社、1980年。
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演習「フランス文学」
この演習はフランス文学に関わるさまざまな問題をテーマとし、ゼミ参加者の主体的な討論をつうじて文学についての理解を深めることを目的とする。ゼミ制度が発足してから3年になるが、これまでに「文学者の政治参加」、「小説と想像力」、「ボードリヤールと記号」などのテーマをとりあげてきた。
1992年度のゼミでは「記号」と「構造」の問題を中心に考察した。提出されたゼミ論文も「都市型「遊」空間の構造」、「乱歩小説の記号論」、「結婚の神話と構造」、「女性の時代--その神話と構造--」など、ゼミのテーマにそったものになっている。なかには「賭博に関する一考察」、あるいは「普通の東京ラーメンとは何か--具としょうゆ味のつゆの構造と記号性--」などという風変わりな、しかしなかなか興味深い論文もあった。
1994度は「文芸批評とはなにか」というテーマのもとに、主題論的批評や精神分析批評、構造主義批評あるいはフォルマリスト批評など、いくつかの批評の方法論について、それぞれの流派を代表する批評家の文章を読みながら検討をくわえていく。ゼミのメンバーは批評のテクストを分析的に解読しつつ、これと並行してフランス語もしくは日本語の文学作品についてじっさいに批評の方法論を応用する作業をすすめる。後期には、各人がそれぞれ準備した批評のこころみをクラスで発表し、その発表について全員が自由な意見の交換をおこなう。
なお、このゼミへの参加(原則として4年次生)を希望する諸君には、4年次までに全学共通科目やフランス文学科の開講科目のうちからフランス文学やフランス思想に関する講義をえらんで受けることをすすめておく。
(高井道夫)
フランス思想というものは、フランス料理とかフランスのファッションといったもののような 存在ではない。存在するのはフランス語で書かれたテクストであり、そのテクストが、
時代毎に、人間につきまとう諸問題、たとえば「我々は何を知ることができるのか」 「我々は真に“人間らしく”あるために何をすべきなのか」「自由とは何か」 「何故悪が存在するのか」「いかにして平和のうちに共存したらいいのか」
「人生に意味はあるのか」といった疑問を扱っているのである。 しかし普遍的な哲学言語というものはコンピューター言語や数学の記号のようには存在しない ために、上に挙げたような問題はギリシャ語、ドイツ語、英語、フランス語、
日本語...といった「自然」言語のうちで問いかけられ、答えが求められることになる。 そしてこれらの諸言語が「思想」に特有の色や調(音楽のように)を与えるため、
我々はあるローカルな固有言語の中でしか思考すること (つまり全ての人間に関わる問いに対する普遍的な回答を求めること)ができないのである。 たとえばフランス人も日本人も死を免れることはできない。
しかし死について日本語で考えた場合とフランス語で考えた場合では、 それぞれ非常に異なる2通りの死生観に至ることになろう。
フランス語学科に入学する学生は、学習の第一段階で通常、 日常生活におけるフランス語による意思の疎通(コミュニケーション)が可能になる。 ついで3年次より新しい領域が開かれてくる。つまりフランス語はフランスの現実 (歴史、社会、文化、政治等)をよりよく知るための道具となるのである。
しかし、単にコミュニケーションや知識を学ぶのみでなく、フランス語で思考し、 それによって「あたりまえの」(つまり日本語での)考え方から脱し、人間に関する大問題を別の角度、別のパースペクティヴで捉えるという カルチャーショックの体験を試みること、つまりフランス語を通じて 「別のやり方で」思考すること。これが「フランス思想」の講義ないし ゼミがめざすことである。ただし、このような体験に至るためには何よりもまず、フランス語学習の初歩の段階から、書き言葉のマスターのために粘り強い努力をする ことが要求される。何故ならテクストなしの思想というものはありえないからである。 したがって読解、それも正しい、高度な読解力を身につけることが、将来「フランス語での」思想との出会いという冒険を企てる学生が、 みずからに課さねばならない第一の目標となろう。
フランス語で書かれた哲学的テクストの大半に翻訳があるということは事実であり、 それらは最初のアプローチのためには有益であり、また時には必要不可欠なこともある しかしながら、翻訳というものは原文のテクストの内容を伝えながらも、 原文からその「異質性」、その「唯一無二の」在り方、いうなれば作品の「顔」を奪ってしまうことは否めない。実際、 翻訳はフランス思想と日本の思想とのあいだの距離を縮小してしまい、ある意味では、 「差異」との出会いという経験を妨げるものとなる。
この差異との出会いという体験は、我々が現在そして将来ますます立ち向かうことになる 地球規模の諸問題をよりよく思考するために欠かせないものである。 それらの問題によって求められるのは、各々がより外へと開かれ、より多くの想像力をもち、 そして何より「他」(人、民族、文化、思想)をより敬うという姿勢なのである。
1)思想史
福井芳男他『フランス文学講座5 思想』大修館、1977年。
沢潟久敬編『フランスの哲学』全3巻、東京大学出版会、1975年。
複数の専門家による論文集。
岳野慶作『フランス思想の流れ』中央出版社、1972年。
フランス語学科の創立者による著作。
J. M.ラムフィット、清水訳『フランス啓蒙思想入門』白水社、1985年。
啓蒙思想の誕生と展開を時代背景とともに論じたもの。
D.モルネ、市川他訳『18世紀フランス思想』大修館、1990年。
ヴォルテール、ディドロ、ルソーを中心に18世紀思想を概観。
内野末雄『19世紀フランス哲学史』明玄書房、1985年。
沢潟久敬『フランス哲学研究』勁草書房、1981年。
J. J. シャリュモー、加藤訳『現代フランスの思想』大修館、1981年。
実存主義から構造主義まで、新しいフランス思想のパノラマ。
J. デリダ他、浜名他訳『現代フランス哲学12講』青土社、1986年。
12人の哲学者が言語や暴力など、現代フランス思想における主要な問題を論 じる。
今村仁司監訳『哲学のポスト・モダン』ユニテ、1985年。
構造主義から脱構築の思想へと展開する現代思想の潮流。
市倉宏祐『現代フランス思想への誘い』岩波書店、1986年。
『アンチ・オディプス』を中心に構造主義の問題性について論じる。
竹田青嗣『現代思想の冒険』ちくま学芸文庫、1992年。
平易な文章で現代思想、とりわけ構造主義以後のフランス思想の中心的課題 を解説。
J.デリダ、若菜他訳『エクリチュールと差異』法政大学出版、1977年。
北沢方邦『構造主義』講談社文庫、1968年。
橋爪大三郎『はじめての構造主義』講談社現代新書、1988年。
上記二冊は構造主義についてのすぐれた入門書。
中村雄二郎『術語集』岩波新書、1985年。
箱石匡行『フランス現象学の系譜』世界書院、1992年。
ベルクソン、マルセル、サルトルらの哲学のうちにある現象学的要素を指摘 したのち、メルロー・ポンティーとレヴィナスの現象学について考察する。
2)個人全集
『モンテーニュ全集』全9巻、白水社、1982年。
『デカルト著作集』全4巻、白水社、1973年。
『パスカル全集』全3巻、人文書院、1967年。
『ルソー全集』全14巻、白水社、1979年。
『ベルグソン全集』全9巻、白水社、1965年。
『アラン著作集』全10巻、白水社、1981年。
『マルセル著作集』全9巻、春秋社、1966年。
『メルロー・ポンティー著作集』全9巻、みすず書房、1967年。
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演習「フランス思想」
「フランス思想」ゼミといっても、このゼミの狙いはデカルトからルソー、ベルクソン、 サルトル、カミュを経てデリダに至るフランスの偉大な哲学者、 思想家の作品や生涯を紹介することではない。そのような歴史的情報ならば、 百科事典やフランス哲学に関する一般的参考書(cf. 基本文献)によって 得ればよいからである。
したがって「フランス思想」のゼミに出席しようと考える学生には、 1年次から日本語で西洋哲学の大筋の流れをまとめた参考書を読み始めることを勧めておく。 目安としての基礎知識を得ておかないと、将来現代思想家の著作に取組む際、 そこにしばしば見られる過去の哲学理論への言及や典拠が理解できず 苦労することになりかねないからである。
ゼミそのものは、毎週の授業とゼミ論(および/あるいは卒論)という2つの柱から 構成されている。
1)授業の内容
a) 現代フランス哲学者の主要な著作を詳細に熟読する。
b) 参加する学生には、その哲学者の他の著作や他のテーマに関して
口頭の研究発表が課せられる。
2)ゼミ論は、授業で扱った哲学者について、あるいは特に興味のあるテーマ
が他にあればそれについて、各自がフランス語で執筆し、学年末に提出し
なければならない。
最近ゼミに参加した学生が選んだテーマを幾つか紹介すれば、
---ポストモダンの「自己」
---仏教の流動性とリオタールの言語ゲーム
---現代のコスモポリティスム
---ユング、魂の探求
---絶対と宇宙:モンドリアンの白などである。
---芸術とポストモダン
---ポストモダンにおけるゴミ
---近代化と未来
---映画はいま
---大きい「ものがたり」と小さい「ものがたり」
---E.ロメール:物理的と形而上学的映画
フランス思想を学ぶには、高度な語学力が必要であり、また哲学の専門用語の多さ、 抽象的理論の難解さなど、様々な困難が予想される。したがって、 ヴォキャブラリーや問題体系に慣れ、自分の研究のテーマと方法論を見つけるためには、 3年次から当ゼミに参加することが望ましい。
(ガブリエル・メランベルジェ)
視野を広げよう
1.学外利用施設
[図書館および資料センター]
国立国会図書館
〒100 千代田区永田町1-10-1
03-3581-2331
国立国会図書館 官庁・国際関係資料室
〒100 東京都千代田区永田町1-10-1
03-3581-2331
国立公文書館
〒102 東京都千代田区北の丸公園3-2
03-3214-0621
外務省外交資料館
〒106 東京都港区麻生台1-5-3
03-3585-4511
都立日比谷図書館
〒100 東京都千代田区日比谷公園1-4
03-3502-0101
都立中央図書館
〒106 東京都港区南麻布5-7-13
03-3442-8451
政府資料等普及調査資料センター
〒103 東京都中央区日本橋堀留町1-6-13 昭和ビル3階
03-3668-1691
国際交流基金図書室
〒102 東京都千代田区紀尾井町3-6 パークビル3階
03-3263-4504
日仏会館図書室
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿3-9-25
03-5424-1141
東京日仏学院図書室
〒162 東京都新宿区市ヶ谷船河原町15 東京日仏学院2階
03-5261-3933
フランス大使館広報部資料室(フランス政府機関の刊行物)
〒106 東京都港区南麻布4-11-44 フランス大使館
03-5420-8800 利用者はかならず行く前に電話すること。
カナダ大使館研究情報センター
〒108 東京都港区赤坂7-3-38 カナダ大使館
03-3408-2101
国連広報センター
〒107 東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館22階
03-3475-1611
東京大学国連委託図書館
〒113 東京都文京区本郷7-1-3 東大総合図書館3階
03-3812-2111(内2645)
EC委員会広報部情報サービス室
〒102 東京都千代田区三番町9-15
ヨーロッパハウス 03-3239-0441
OECD東京広報センター
〒107 東京都港区赤坂2-3-4 ランディック赤坂ビル3階
03-3586-2016
留学情報センター
〒153 東京都目黒区駒場4-5-29
03-3485-6827
日本図書館協会児童図書センター
〒154 東京都世田谷区太子堂1-1-10
03-3948-4516
東京子ども図書室資料館
〒176 東京都練馬区豊玉北1-9-1 フォレスト・ハイツ 311
03-3948-4516
早稲田大学語学教育研究図書室
〒160 東京都新宿区西早稲田1-6-1 早大語学教育研究所
03-3203-4141 内線5354
早稲田大学演劇博物館図書室
〒160 東京都新宿区西早稲田1-6-1 早大演劇博物館1階
03-3203-4141 身分証明書携帯のこと。
(フランス語を学習することの出来る全国の主な施設)
アリアンス・フランセーズ札幌
(011)261-2771
アリアンス・フランセーズ仙台
(022)225-1475
東京日仏学院
(03)5261-3933
http://www.ifjTokyo.or.jp
横浜日仏学院
(045)201-1514
アリアンス・フランセーズ名古屋
(052)781-2822
アリアンス・フランセーズ大阪
(06)6541-3758
http://www2.gol.com/users/afosa
大阪日仏センター
(06)358-7391
関西日仏学館
(075)761-2105
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ifjk606
関西日仏交流会館
(075)752-7171
九州日仏学館
(092)712-0904
http://www.ifjk.org/index2-j.html
歴史とは現在を理解するために過去を問うものである。フランス語を選択した学生諸君のなかには、高校の先生がフランス革命のことを情熱的に話すのを聞いたので、という人も多いだろう。フランスとはどんな国なのか?
この大動乱からいったいどんな社会が生まれたのか? フランス人のものの考え方は他の国の人々とどう違い、またそれは、さまざまな人間の問題に独創的な解決案を持っているのだろうか?
地理の勉強にも密接に結びついた、歴史の勉強は学生の好奇心を満足させ、さらにそれを育んでゆくことだろう。
20年ほど前から、歴史学は大きな革新をとげた。現在の歴史学は、他の人文諸科学と結びついて、人間のあらゆる進化発展をとらえようとしている。今日の歴史学者は、伝統的な歴史学の中心をなしていた政治・外交の変化よりも経済・社会の変化や、文化・宗教の変異に関心を寄せている。公的生活よりは、普通の男女の私的な生活や、彼らの生や死、愛や野心についての表象が興味の対象となる。こうして、私たちのあらゆる習慣が問い直され、批判的研究の対象となる。というわけで学生諸君が、広い一般教養をもち、たくさん本を読み、興味をもって原典資(史)料にあたり、さらに批判的精神をもってくれればくれるほど、本講義から得るところが多く、楽しんで参加できるものとなるだろう。
佐藤・池上『西ヨーロッパ世界の形成』中央公論社「世界の歴史」10、1997年。
フランスを含むヨーロッパ中世通史。
長谷川・大久保・土肥『ヨーロッパ近世の開花』中央公論社「世界の歴史」17、 1997年。
フランスを含むヨーロッパ近世通史。
柴田・樺山・福井編『フランス史』1, 2, 3、山川出版、1995-96年。
最新の研究成果を取り入れたフランス通史。
田辺 保『フランス史・歴史の旅』朝日選書、1990年。
手頃なフランス史入門。
木村・志垣編『概説フランス史』有斐閣、1982年。
斬新な視角から見たフランスの歴史。
清水・根本監修『フランス』新潮社、1993年。
フランスの歴史と文化を網羅的に紹介。
P. ガクソット、内海・林田訳『フランス人の歴史』1、2、3、みすず書房、1973年。
デュビュー・マンドルー、前川貞次郎他訳『フランス文化史』1、2、3、人文書院、1977年。
アナール学派によるフランス文化の通史。
二宮宏之『深層のヨーロッパ』山川出版社、1990年。
M.ブロック、河野・飯沼訳『フランス農村史の基本性格』1、2、創文社、1959年。
アナール学派の大家によるフランス経済史。
R. ダーントン、海保・鷲見訳『猫の大虐殺』岩波書店、1986年。
18世紀フランスの文化と歴史に関する鋭い分析。
Ph. アリエス、伊藤・成瀬訳『死と歴史』みすず書房、1983年。
ヨーロッパ人の死生観の歴史。
Ph. アリエス、福井憲彦訳『図説 死の文化史』日本エディター・スクール、1990年。
J. ドリュモー、永見・西澤訳『恐怖心の歴史--ヨーロッパ近世の心性史』新評論、1997年。
ソレ、西川他訳『性愛の社会史』人文書院、1985年。
愛と性の歴史に関する名著。
R. シャルチエ、宮下・長谷川訳『読書と読者』岩波書店、1994年。
読書行為の視点からフランス文化の変容を描く。
J. P.アロン、佐藤悦子訳『食べるフランス史』人文書院、1985年。
フランス19世紀の食物の社会史。
新村猛他訳『封建社会』みすず書房、1973年。
橋口倫介『十字軍』岩波書店、1974年。
ヴォルテール、丸山熊雄訳『ルイ14世の世紀』岩波書店、1958年。
A. ソブール、小場瀬・渡辺訳『フランス革命』岩波新書、1953年。
G. ルフェーブル、遅塚・高橋・柴田訳『1789年---フランス革命序論』岩波書店、1975年。
札幌日仏協会編『フランス革命の光と闇』けい草書房、1997年。
A. ヤング、宮崎洋訳『フランス紀行』法政大学出版、1983年。
英国人旅行者による革命前夜のフランスの描写。貴重な資料。
河野健二『フランス革命と明治維新』日本放送協会出版、1966年。
河野健二編『フランス・ブルジョワ社会の成立』岩波書店、1977年。
喜安 朗『パリの聖月曜日』平凡社、1982年。
M.アギュロン、阿河雄二郎訳『フランス共和国の肖像』ミネルバ書房、1989年。
桜井哲夫『近代の意味』日本放送協会出版、1984年。
遅塚忠躬『ヨーロッパの革命』講談社、1990年。
フランスをはじめ近代ヨーロッパにおける諸革命を手ぎわよく紹介。
P. ミケル、渡辺一民訳『ドレフュス事件』クセジュ文庫、白水社、1960年。
G. ルフラン、高橋治男訳『フランス人民戦線』クセジュ文庫、1969年。
H. ミシェル、長谷川公昭訳『ヴィシー政権』クセジュ文庫、1979年。
H. ミシェル、長谷川公昭訳『ヴィシー政権』クセジュ文庫、1979年。
H. ミシェル、中島昭和訳『自由フランスの歴史』クセジュ文庫、1974年。
A. ワース、野口・高坂訳『フランス現代史』みすず書房、1958年。
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演習「フランス歴史」
本ゼミでは、とりわけ、啓蒙期とフランス革命において目指された新しい人間が、 19世紀をとおして徐々に誕生してきた様子を見てゆくことになる。例として、「教育の革命」と呼ぶべきものを取り上げることになろう。
19世紀はすぐれた教育の時代であった。1880年には無償で義務教育をほどこす学校ができ、また同じ1880年に最初の女子中高等学校が作られる。つまりこの革命とは、民衆教育、女子教育の革命であった。これは、たんなる制度の進歩にとどまらぬ大きな文化的革命として理解しなければならない。教育の向上を可能にし、またそれを要求したのは、経済の発展だけではなく、文化・宗教・政治に対するフランス人の考え方の根深い変化であり、この変化こそが、それまでそうした権利を持っていなかった人々に学校の門戸を開放させることになったのである。この開放の裏には、保守派のフランス人と進歩派のフランス人のあいだでの大論争があったが、論争の核心にあったのは民主主義のとらえ方にほかならない。
こうした民衆教育および女子教育による民主主義のゆっくりした前進を分析するために、本ゼミではまず概説書を用いて19世紀のフランス社会の基本的特徴を把握し、ついで19世紀の諸史料を分析しながら、当時の民衆文化、女性文化にさまざまな具体的アプローチを行ってゆく。史料としては、とくに当時の男女の自伝や私的な日記が重視されよう。それらは、その書き手たちが、彼らに与えられた新しい文化を前にして、どんな困難をかかえ、どんな希望をもち、またどんな世界観をもっていたかを物語ってくれる。
まとめていえば、19世紀末についにすべてのフランス人に与えられることになった教育は、そのイデオロギーやその論理、精神によって、またそれが伝搬した人生観や社会観、フランス観によって、その後の何世代ものフランス人に深い影響を与えてきた。今日なお、合理主義、個人主義、愛国心といったいくつかの「フランス人気質」は、こうした教育から説明がつくだろう。しかし、フランス人に安易に用いられるそうした形容句は、まさしく、歴史的分析によって解明され、またその微妙な意味合いが理解されるべきものである。こうした作業は、今日、フランス人のものの考え方が大きく変化しているだけに、なおさら急務となっている。
下に、これまでに提出されたゼミ論文のテーマならびに紹介された文献のいくつかあげておく。
19世紀フランスと日本における女子教育の発達
19世紀フランスと日本における母親像
19〜20世紀フランスと日本における見合い結婚と恋愛結婚:結婚観の変遷
社会的上昇における女性の役割
ファッション:19世紀における女性の地位の表現
M. ペロー編、杉村・志賀監訳『女性史は可能か』藤原書店、1992年。
女性史研究の方法論を知るために最適の書。
J. P. アロン編、片岡幸彦編訳『路地裏の女性史』新評論、1984年。
19世紀の女性が置かれていた状況(家族・仕事・教育)を平易に解説。
ロール・アドレール、加藤・杉村訳『黎明期のフェミニスム』人文書院、1981年。
女性ジャーナリスト論。自己表現をしようとした19世紀の女性がぶつかった諸々の困難を解説。
J. ラボー、加藤康子訳『フェミニスムの歴史』新評論、1987年。
中世から現代にいたるフェミニスム運動の概説書。
A. コルバン、杉村和子監訳『娼婦』藤原書店、1991年。
なぜ19世紀のパリで売春業が発展したかを説いた大歴史家の名著。
C. デュロン『大世紀を支えた女たち』白水社、1991年。
ルイ14世時代における女性の日常生活を具体的な例とともに描写した興味深い書物。
M. ペロー「フランスにおける女性史研究の15年」『Actes』第5号--特集『男と女の関係学』、日本エディター・スクール、1988年。
ペロー女史はフランス女性史の専門家。ここでは、どのようにして歴史家たちが女性史に関心を抱きはじめたか、また研究のために用いられてきた方法について考察している。
A. ミシェル、村上真弓訳『フェミニズムの世界史』クセジュ文庫、1993年。
旧石器時代から20世紀までの女性の条件を論じた、明快な女性史入門。
(長谷川イザベル)
フランス語を学ぼうと思えば、その言葉の背景にある文化や社会を知る必要にせまられる。ある国の歴史、政治、哲学などはまずそこに生きる人々によって発想されたり、作られたりしたものだという単純な事実を認めることから理解が始まるものである。また社会というものは固定したものではなく、絶えず変化していくものであることに注意を払う必要がある。たとえば、フランス人の家族観、結婚観、宗教観などがどのように変わったのかを知ることで、フランス社会全体の変化の方向をある程度占うことが出来るのである。フランス社会の研究テーマとして考えられるものをいくつか上げてみよう。外国人労働者問題や移民に関する現象はこの30年間でどう変わったのか、深刻な失業問題の背景に潜む教育制度の問題など、最近試みられてきた改革努力について分析を進めることができる。従来欧米社会に独特なものとされてきた現象--人手不足や外国人労働者問題、結婚や出生率の低下、離婚率の増加等--も最近にいたって日本でも見られるようになってきた。欧米でのこうした問題への取組を知ることから、多くのことが学べるのではなかろうか。
日仏の比較を試みてみよう。たとえば、フランス人から見ると、日本という国は大変豊かそうに見える。つまり労働者やホワイトカラーの賃金は高いし、仕事を失う危険もないし、羨ましいかぎりである。しかしその一方で、長い労働時間や残業の存在、短いヴァカンスの問題などが指摘できよう。恒常的な残業の存在については、日仏間の労働形態の違いから来ている部分が大きいようにも見える。勤務時間中、フランス人はあまり休憩時間を取らないで集中して仕事を片付けようとする。その結果残業をしなくてもいいことになる。その意味で、残業を予め組み込んだような日本人の労働形態はフランス人の目には大変奇妙なものと映る。
また教育を比較してみると両国の違いの大きさに驚かされる。たとえば日本の塾のようなものはフランスにはないし、大学入学資格試験(受験者の30%が不合格)をパスすれば原則として、どこの大学にも入学できることになっている。
近年フランスで問題になっている、イスラム教徒の女生徒たちのチャドル着用事件は移民たちのフランス社会への統合の難しさを象徴する事例といえようが、日本においても、最近保育園や幼稚園で外国人の子供たちが増えており、将来文化的摩擦の問題が起こるかもしれない。
以上のように、フランス社会の抱える問題を考えることを通じて、日本の問題を考える機会が得られるであろう。
1)フランス人やフランス一般
ジェラール・メルメ、磯村他訳『フランス人白書』(フランコスコピー)エディション・フランセーズ、1985年。
現代のフランスやフランス人の生活や考え方についての貴重な資料。
T. ゼルディン、垂水洋子訳『フランス人1, 2 --現代フランスの肖像--』みすず 書房、1981年。
イギリスの歴史家が描いたフランスとフランス人。
F.ギャスパール、C., S.シュレーベル、林 信弘監訳『外国人労働者のフランス』 法律文化社、1989年。
宮島 喬『ひとつのヨーロッパいくつものヨーロッパ』東京大学出版会、1992年。
社会保障研究所編『フランスの社会保障』東京大学出版会、1989年。
清水 徹、根本長兵衛監修『フランス--世界の歴史と文化--』新潮社、1993年。
林 瑞枝『フランスの異邦人--移民・難民・小数者の苦悩--』中公新書、中央公論社、1984年。
フランスの移民や難民の暮らしや考え方など、今日的問題をあつかっている。
J. P.アロン、佐藤悦子訳『食べるフランス史』人文書院、1985年。
19世紀の貴族と庶民の食生活とその比較。
アラン・ペイルフィット、根本・天野訳『フランス病』実業の日本社、1978年。
興味深いフランス社会論。
寿里 茂『現代フランスの社会構造_社会学的視座』東京大学出版会、1984年。
フランス社会学研究の動向を知るためによい。
宮島 喬・梶田孝道・伊藤るり『先進社会のジレンマ_現代フランス社会の実像をもとめて』有斐閣、1985年。
日本人によるすぐれた現代フランス社会研究。
2)社会学や歴史一般
Ph.アリエス、中内敏夫・森田伸子編訳『教育の誕生』新評論、1983年。
「心性史とは何か」「避妊の起源」「生と死への態度」「家族の中の子ども」など。
P.ブルデュー、加藤晴久編『ピエール・ブルデュー超領域の人間学)』藤原書房、1990年。
日本人のためのブルデュー入門。
P.ブルデュー、田原音和監訳『社会学の社会学』藤原書店。
ブルデュー社会学の方法論について。
3)教育社会学
原田種雄他編『現代フランスの教育---現状と改革運動---』、早稲田大学出版部、1988年。
P. ブルデュー&J. C. パスロン、宮島 喬訳『再生産(教育・社会・文化)』 藤原書店、1991年。
エリート階級再生産のために教育制度のはたす役割。
P.ブルデュー、石井洋二郎監訳『遺産相続者たち』藤原書店。
八幡和郎『フランス式エリート育成法---ENA留学記』中公新書、1984年。
4)家族社会学
M.セガレーヌ『妻と夫の社会史』新評論、1983年。
男女の伝統的な役割分担について。
M.セガレーヌ、片岡幸彦・陽子訳『儀礼としての愛と結婚』東京新評論、1985年。
中世から現代まで結婚の儀礼や結婚制度について論じたもの。中世以来の絵や写真の紹介や分析。
M.セガレーヌ、片岡他訳『家族の歴史人類学』新評論、1987年。
家族についての基本的著作。
有地 亨『フランスの親子・日本の親子』NHKブックス、1981年。
フランスや日本の親子についての比較文化論。
5)女性やジェンダー
M.デュリュ=ベラ、中野知律訳『娘の学校(性差の社会的再生産)』藤原書店。
女性にとっての教育の意味を論じたもの。
E. バダンテール、上村くにこ・饗庭千代子訳『男は女・女は男』筑摩書房、1992年。
男女両性の対立と類似性について。
E. シュルロ他編『女性とは何か、上・下』人文書院、1988年。
6)母親学・母性
E. バダンテール、鈴木 晶訳『母性という神話』筑摩書房、1991年。
母性本能はどのようにして生まれたか。
Y. キニビレール&C. フケ『母親の歴史』筑摩書房(近刊)
家族の中の母親の役割や存在について。間引きや子供を捨てる心理についても言及。
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演習「フランス社会」
このゼミではフランス社会研究で取りあげた様々な問題を参考にして、学生個人が関心を持つテーマを選び、それについて自主的に研究をしていく。参考までに以下にゼミの共通テーマとして今までに取りあげられたものをあげておく。卒論ないしゼミ論の提出が義務づけられる。テーマの絞り方や資料の探し方等についても指導する。
テーマとしては、広い意味で家族社会学にかかわる分野のものを選ぶが、今後はもっと研究対象領域を広げていくつもりである。おもなテーマと参考資料は以下の通り。
Theodore Zeldin, Les Francais, Fayard, 1983. 『フランス人』みすず書房、1992年。
母性愛と言うのは本能であるか神話であるか
Elisabeth Badinter, L'amour en plus (Histoire de l'amour maternelXVIIe XXe siecle),
Flammarion, 1980.
Yvonne Knibiehler && Catherine Fouquet, L'histoire des meres du Moyen Age a nos jours, Montalba, 1980.
父親学=父親と父親の歴史(家族の中の父親の地位や役割について)
Yvonne Knibiehler, Les Peres aussi ont une histoire, Hachette, 1987.
Les "nouveaux peres"について
Christine Colonna Cesari, La grossesse du pere, L'Agore Chiron, 1990.
Genevieve Delaisi de Parseval, La part du pere, Seuil, 1981.
Jacqueline Kelen, Les nouveaux peres, Flammarion, 1986.
子供の歴史、育児書の社会学
Philippe Aries, L'enfant et la vie familiale sous l'ancien regime, Seuil, 1973.
Genevieve Delaisi de Parseval && Suzanne Lallemand, L'art d'accommoder
les bebes (100 ans de recettes francaises de puericulture), Seuil, 1980.
Men Studies(男性学)
Elisabeth Badinter, L'Un est l'Autre (des relations entre hommes et femmes),
Odile Jacob, 1986.
『男は女・女は男』(両性具有の時代へ)、筑摩書房、1992年。
Elisabeth Badinter, XY (de l'identite masculine), Odile Jacob, 1992.
(ジョリヴェ, ミュリエル)
フランスは近代市民革命の祖国として、民主政治のモデルの一つとなっているが、その歴史は多くの混乱と犠牲を伴うものであった。フランスは革命以来現在に至るまで、16の憲法を持ち、王政、帝政、共和制、あるいは同じ共和制でも議院内閣制と大統領制など、ありとあらゆる憲法・政治制度を経験し、あたかも近代民主主義の実験室の様相を呈している。その結果、フランスの政治は実に多様な政治制度と政治理論を生み、研究対象として大いに知的好奇心を刺激するものがある。しかし同時に我々日本人にとって、フランス政治の研究は以下のような意味でも意義あるものと言えよう。
第一に、フランスの政治制度や国民の政治に対する態度は日本人とは異なり、政治という人間の普遍的営みを考えるうえで、自分のものとは異なる別の引照基準を提供してくれる。たとえば、フランスではある集団に不利な法改正が提案されようものなら、大々的なストが打たれる(例えば交通スト、トラック運転手によるハイウェイ封鎖など)が、一般のフランス人は渋々ながらもこれをおとなしく受け入れる。一般利用者の不便といったことが労働者の権利に優先するとは簡単には言えないお国柄である。フランス的民主制度を日本の政治はもとより、アメリカを含む西欧的政治のあり方や理念などを考察するための比較モデルとして使うことができるだろう。
第二に、フランスは他の先進工業諸国同様さまざまな困難な課題を抱えているが、現代の日本社会の抱える問題と共通する点もあり、互いにその経験に学ぶことができる。一例をあげれば、移民労働者の増加とその社会的影響など、その経験において先行するフランスのケースから多くの教訓を引き出すことができるであろう。
第三に、かつての大国フランスは依然として単なる中級国家ではない。小国願望が強い消極的な日本に対する国際社会の風当たりが強い昨今、「政治大国」フランスの秘密を探る作業は、国際社会における日本の「身の処し方」を理解するうえで興味深くまた意義深いものとなろう。
具体的には以下のような内容について検討する。
1.政治文化
フランス人の政治に対する独特な考え方や行動様式は、長い歴史的な経験の中で形成されたものであり、歴史的な考察が必要となる。また同時に「権威」に対する態度といった社会心理学的な次元の分析も欠かせない。
2.憲法・政治制度史
現在の政治制度はフランス革命以来の政治的発展の延長線上にあり、歴史的考察は不可欠である。現代に至るまで、革命以来の歴史が大きく影響していること自体がフランス政治の特徴の一つと言える。
3.第五共和制の構造
現行憲法の特徴は何か。議会と政府の関係、大統領と首相との関係、大統領の強力な権限、中央行政機構と地方行政機構との関係など検討すべき主題は多い。
4.官僚制
フランスの官僚制度は強力であり、政策決定過程に対する影響力の点でも、政治エリートの供給源としても重要である。ヨーロッパ統合がすすむ今日、EC官僚制との競合現象が興味深い。
5.政党と選挙 国民の政治参加を保障する制度としての選挙と政党について検討する。長い間、小党分立ゆえに政治の不安定化を招いたことを考えると、政党システムについての理解はフランス政治の理解のための有効な方法である。
6.政治的補充
政治エリートとはいかなる人々であり、どのようなコースを通って指導者階級に入ったのかを知ることは、政治システムの特徴を記述するためのもう一つの方法である。
7.アクチュアリテ
現代フランス社会が抱える問題、例えば移民の社会的統合に伴う軋轢や排斥の現象、あるいはヨーロッパ統合の深化の結果としての国家主権の委譲に対するナショナリスティックな反発など、フランス社会の将来の有り方やヨーロッパの将来に係わる問題の検討が必要である。
我々はしばしば己の慣れ親しんだ考え方や問題解決方法を当たり前と見做す傾向があり、新しい事態に直面すると、既存の基準を当てはめてそれを処理しようとする。その結果、事態が前例のない新しいものであればあるほど、取扱に苦慮し解決も覚束ないことになる。それどころかそもそも問題の核心がどこにあるのかも理解出来ないことにもなりかねない。多様な価値観を持つ国家や人々からなる国際社会の一員として相互依存関係の深まりの中に生き、積極的な貢献をしていくためには、自己とは異なる社会に対する鋭敏な感受性を育てていくことが大切である。そうした視点からフランス社会の諸相を研究していく。
1)概説
中木康夫編『現代フランスの国家と政治』有斐閣、1987年。
コンパクトにまとめられた入門書。
櫻井陽二『フランス政治体制論』芦書房、1985年。
政治文化論が優れている。
J. ヘイワード、岩本・川崎・古川訳『フランス政治百科』上、下、勁草書房、1986年。
イギリスの政治学者による優れた入門書。
奥島・中村編『フランスの政治』早稲田大学出版部、1993年。
『フランスの社会』、『フランスの経済』とセットになっている。
Goguel, F. et A. Grosser, La politique en France, Armand Colin, 1984.
フランスにおける入門書の古典。
Ehrmann, Henry, W. Politics in France, Little Brown and Company, 1983.
比較政治学の理論的枠組みを踏まえた分析。
Charlot, Jean, La politique en France, Le Livre de Poche, 1994.
コンパクトで優れた入門書。
2)政治文化
M. クロジィエ、影山喜一訳『閉ざされた社会』日本経済新聞社、1981年。
フランスにおける社会関係のモデル化。
A. ペイルフィット、根本・天野訳『フランス病』実業の日本社、1978年。
動脈硬化症に陥ったフランス社会批判。
E. R.クルツィウス、大野俊一訳『フランス文化論』みすず書房、1977年。
ドイツ人によるフランス論の古典。
S. ホフマン、天野恒雄訳『フランス現代史』白水社、1977年。
アメリカのフランス研究の第一人者による現代政治史。
武者小路公秀『現代フランスの政治意識』弘文堂、1960年。
独創的なナショナリズム論。
Siegfried, Andre, L'ame des peuples, Hachette, 1950.
国民性論の古典。
3)政治史、憲法・政治制度
中木康夫『フランス政治史』上、中、下、未来社、1975年。
最も総合的だがいささか難解。
中木・河合・山口『現代ヨーロッパ政治史』有斐閣、1990年。
英・独・仏の簡潔な戦後史。
A. ワース、野口・高坂訳『フランス現代史』みすず書房、1958年。
両大戦間期から第2次大戦直後の時期についての優れた記述。
Ch.ドゴール、村上・山崎訳『大戦回顧録』1、2、みすず書房、1971年。
---------- 朝日新聞外報部訳『希望の回想』朝日新聞社、1971年。
救国の英雄にして偉大なる政治家の回顧録。
河野健二『フランス現代史』山川出版社、1977年。
利用しやすい現代政治史。
渡辺啓貴『ミッテラン時代のフランス』芦書房、1991年。
社会党政権下の政治、外交、社会。
藤村 信『パンと夢と三色旗と』岩波書店、1987年。
優れたジャーナリストによるフランス報告。
V. ジスカールデスタン、尾崎浩訳『権力と人生』読売新聞社、1990年。
------------、池村俊郎訳『エリゼ宮の決断』読売新聞社、1993年。
第五共和制三人目の大統領の自伝。
F. O. ジスベール、宝利・草場訳『大統領ミッテラン』読売新聞社、1993年。
ジャーナリストによるミッテラン分析。
清水 弟『フランスの憂鬱』岩波書店、1992年。
パリ特派員による現代フランス社会報告。
Chapsal, Jacques, La vie politique en France de 1940 a 1958, PUF, 1984.
-------------- La vie politique sous la Ve Republique 1, 2, PUF, 1989.
パリ政治学院の講義に基づく、必読の教科書。
樋口陽一『比較憲法』青林書院新社、1977年。
フランスの現行憲法を他国の憲法やフランスの過去の憲法と比較する。
中村雅治「危機と政治変動」中井・三輪編『権力と人間』彩流社、1988年。
---------- 「フランス国家と経済」中井・三輪・加藤編『第2次世界大戦と現代』東京大学出版会、1986年。
第2次大戦前後の政治制度改革や経済制度改革を簡潔に述べる。
Duverger, Maurice, Les Constitutions de la France, PUF, 1983. -----------
Le systeme politique francais, PUF, 1985.
フランスを代表する憲法学者による憲法論、憲法史。
柴田・樺山・福井編『フランス史』1, 2, 3, 山川出版社、1995年。
最近の通史であり、政治・経済・文化面を総合的にあつかう。
4)行政機構、官僚制
山口俊夫『概説フランス法』上、東大出版会、1978年。
行政機構を体系的に説明。
マーク・ケッセルマン、本田弘訳『地方政治と政治過程』時潮社、1981年。
少し古いが、地方政治の力学を描いた優れた著作。
Suleiman, E. N., Politics power and bureaucracy in France, Princeton UP, 1974.
フランス官僚制研究に実証的手法を導入した記念碑的作品。
P. ビルンボーム、田口・国広訳『現代フランスの権力エリート』日本経済評論社。
権力エリートを生み出す官僚機構の役割を分析。
八幡和郎『フランス式エリート育成法』中央公論社、1984年。
エリート官僚養成学校(ENA)留学記。
5)政党と選挙
Borella, F. Les partis politiques dans la France d'aujourd'hui, Seuil, 1990.
コンパクトで読みやすく優れている。
Ysmal, C., Les partis politiques sous la Ve Republique, Montchrestien,1989.
政党社会学の理論を踏まえた本格的研究。
J. シャルロ、野地孝一訳『保守支配の構造』みすず書房。
ドゴール体制下の支配政党の分析。
C. ニコレ、白井・千葉訳『フランスの急進主義』白水社。
以下の二書同様クセジュ新書の一冊で、簡潔な記述。
J.ドフラーヌ、野沢協訳『フランスの左翼』白水社。
J. C. プティフィス、池部雅英訳『フランスの右翼』白水社。
6)対外政策
H. ティント、藤木登訳『現代フランス外交史』御茶の水書房、1977年。
数少ない翻訳書の一つ。ただし60年代までで終わる。
高柳先男『ヨーロッパの精神と現実』勁草書房、1987年。
ヨーロッパ国際政治との関連でフランスの外交にも触れる。
Grosser, A., Affaires exterieures, Flammarion, 1989.
独仏関係の第一人者による数少ない通史。
Macridis, R. C., "French Foreign Policy the quest for rank" in R.C.
Macridis ed., Foreign Policy in World Politics, Prentice Hall, 1992.
主要国との比較を通じてフランス外交の特質を探る。
De La Gorce, P. M. et Armand-Denis Schor, La politique etrangere de la Ve
Republique, PUF, 1992.
フランス外交の歴史と争点を簡潔にまとめている。
7)フランス政治の課題
宮島・梶田・伊藤『先進社会のジレンマ』有斐閣、1985年。
日本における現代フランス社会研究の出発点。
原・宮島編『フランスの社会』早稲田大学出版部、1993年。
優れた入門書。
梶田孝道『新しい民族問題』中央公論社、1993年。
フランスの例が多く参考になる。
A トゥーレーヌ他、宮島喬訳『現代国家と地域闘争』新泉社、1984年。
地域主義の華やかりしころの社会運動を描く。
林 瑞枝『フランスの異邦人』中央公論社、1984年。
移民労働者の生活を、その中に入って行き描く。
藤村 信『夜と霧の人間劇』岩波書店、1988年。
第2次大戦中の対独協力は現在にも尾を引く問題であることを説く。
Mendras, H., La seconde Revolution francaise, Gallimard, 1988.
60年代半ばから起こった社会変動はまさに革命と呼ぶに相応しいことを明らかにする。
8)フランスとヨーロッパ
梶田孝道『統合と分裂のヨーロッパ』岩波書店、1993年。
統合のもたらす社会的・政治的影響を分析。
年報政治学『EC統合とヨーロッパ政治』岩波書店、1993年。
マーストリヒト条約の問題点と各国の対応を明らかにする。
エドガー・モラン、林勝一訳『ヨーロッパを考える』法政大学出版局、1988年。
ヨーロッパ文明の特徴を論じる。
エンディミヨン・ウィルキンソン、白須英子訳『新版 誤解』中央公論社、1992年。
日欧摩擦の原因を文化的要因から説明する。
L'Europe des Communautes, Paris, La Documentation francaise, 1992.
EC、欧州統合問題をテーマ別にあつかった便利な本。
Lequesne, Christian, Paris-Bruxelles, Comment se fait la politique europeenne
de la France, Paris, Presses de la Fondation nationale des Sciences politiques,
1993.
フランスのヨーロッパ政策決定過程を論じたすぐれた研究書。
De La Serre, Leruez J. && Wallace H. eds., Les politiques etrangeres
de la France et de la Grande-Bretagne depuis 1945, Paris, Presses de la Fondation
nationale des Sciences politiques, 1990.
英仏のヨーロッパ専門家が戦後の英仏の対外政策を対比的に論じる。
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演習「フランス政治演習」
本ゼミにおいては、三年次において履修した「フランス政治研究」の内容を発展させ、また各人の関心を尊重しつつ、フランス政治の諸相を深く研究していく。ゼミの成果は端的に言って、結局どれだけ質の高い卒論またはゼミ論が書けたかで測られる。その意味では個人研究の側面が特に重要となるが、しかし同時に、前期に行われる共通テーマの学習は参加者の関心を広げるうえで、また議論のための共通の土俵を作るために重要である。
共通テーマとしては、ここ数年「フランスとヨーロッパ」が選ばれている。ヨーロッパ建設が進み、フランスの政治や社会、あるいはフランス人の日々の生活はECレベルでの決定に大きく左右されるように成ってきているからである。いくつかの本や論文を一緒に読みながら議論をしていく。
個人研究のテーマは多様であるが、1993年度から例を上げると、「フランスにおける移民」、「反ユダヤ主義と新聞」、「フランスの教育システム」、「EC統合と人の移動」、「ECの共通防衛政策」、「日本企業のフランス進出」など多岐に渡っている。副専攻のゼミと連携させて準備されたものもある。
なお本ゼミは地域研究的視点からヨーロッパの中のフランスを研究しているが、それを効果的に行うためには、ゼミ開始前に以下のような分野の講義をあらかじめ、あるいは並行して履修することが望ましい。政治社会学、比較政治学、国際関係論、国際政治史、国際社会学など。
(中村雅治)