2. 地 域 研 究 の 歴 史 と 現 状
(1) はじめに / (2)地域研究の定義 / (3) 地域研究の必要性 / (4)地域研究の歴史 /
(5) 日本における地域研究の現状 / (6)おわりに
(3) 地域研究の必要性

 地域研究は必要から生まれて来たものだが、では何故このような地域研究が必要となったのであろうか。それは学問的および国家的な2つの理由からである。
 まず第1に、地域研究は19世紀の専門分化主義に対する批判および反省の一環として起こって来たことである。確かに、19世紀以来の学問の著しい発達が、人間社会の量的かつ質的向上をもたらしたことは否定できないが、その一方、学問は極度に専門分化し、知識が細分化されたため、えてして人間社会を全体としてとらえる視点が疎んせられるという弊害を生ぜせしめた。そこで20世紀にはいると、学閥研究の専門分化(specialization, departmentalization)というヨーロッパ風の伝統に対して、専門知識の統合化(intrgration)によってこそ、人間社会の全体像を把握することが出来るのだという反省が高まった。そして大学教育においては、一般教養(general education)が重視されるようになり、また学際的研究として地域研究や国際関係論が注目されるに至ったのである。
 さらに国家的理由からも、地域研究の必要性が生じた。すなわち第1次世界大戦までの世界は、全てがヨーロッパと米国中心であり、その国際関係はいわば同質の文化圏内の出来事に過ぎなかった。ところが第1次大戦後、そして特に第2次大戦後、世界は欧米中心の国際関係から、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの異質の文化圏を含む、文字通り世界的な規模の国際関係へと発展していったのである。それに伴って、従来の同質文化圏に属する仲間同士の相互研究方法ではもはや通用しなくなり、異質文化の理解という新たな研究方法がどうしても必要になった。つまり、欧米諸国にとっては、自分たちと異なる文化価値体系を持った地域の政治、経済、社会などの研究を行おうとすれば、まずその異質文化そのものを理解しなければならない訳である。ここに総合的研究を重視する地域研究の方法論が必要になってくるのである。
 そこで次に地域研究の歴史をみてみよう。
表紙に戻る