2. 地 域 研 究 の 歴 史 と 現 状
(1) はじめに / (2)地域研究の定義 / (3) 地域研究の必要性 / (4)地域研究の歴史 /
(5) 日本における地域研究の現状 / (6)おわりに
(2) 地域研究の定義

 地域研究は、わが国においても学問として漸く定着して来たようだが、その概念は広く、必ずしも明確ではない。これは地域研究が社会的要請から生まれたという経緯から考えれぱやむをえない面もあるが、概念規定の不明確さが学問としての体系化を困難にしていることも事実である。
 しかし、地域研究は一般的には、「特定地域に関する総合的研究」と定義することが出来よう。例えば、研究社の『新英和中辞典』第5版(1985年)のarea studyを見ると、地域研究は「ある地域の地理、歴史、言語、文化などの総合的研究」とされている。また、『ウェブスター国際英語辞典』(Webster's Third New Intemational Dictionary of the Enghsh Language, 1996)によると、地域研究(area research)は「個々の地理的、社会文化ないしは政治地域の総合的、科学的理解および他の地域との比較を〔的とした学際的研究」とされている。
 しかし「ブリタニカ国際大百科事典』(1991年)や『平凡社大百科事典』(1985年)には、地域研究の項目はあるものの、その定義はなされていない。これは地域研究がすでに学問としては定着しているものの、その概念が明確でないことを示すものと言えよう。
 ともかく、地域研究は一応「特定地域に関する総合的研究」と定義出来るにしても、この定義でもなお暖昧さが残ろう。しからば地域(area)とは何か、総合的研究(integrated study)とはなにかということである。そこでこの2つの概念をさらに明らかにする必要があろう。
 まず、地域というのは包括的な概念であり、実際にはいくつかの意味に解されている。すなわち、一般的には極東、南アジア、西欧、東欧といった世界の主要地域(a world area)、あるいはラテンアメリカ、中近東、中米といった文化圏(a culture area)、あるいは中国、ソ連、ブラジルなどの国家(a nation)を指す場合が多いが、時には欧米の植民地や属領(a colony or a dependency)、米国の南部、ブラジルの北東部といった国内地域(a region)を表す場合もある。
 一方、総合的研究というのは、政治学、経済学、歴史学、といったひとつの学問分野(discipline)の研究ではなく、いくつかの学問分野の協同による横断的(cross-disciplinary)ないしは学際的(inter-disciplinary)な研究を意味している。しかしここでも、学際的研究の範囲は殴昧であり、社会科学分野の学際なのか、人文科学分野の学際なのかはっきりしない。
 このように、対象地域も広く解釈できるし、 研究方法も総合的ということで如何様にも解釈することが出来る。従って、地域研究の定義は漠然としており、いわば大枠を示すものにすぎないと言えよう。重要なのは、特定地域の全体像ないしは特徴を明らかにするためには、伝続的な方法ではなく、学際的な方法が必要だということである。
 そこで、地域研究の定義をもう少し具体的に行うならば、地域研究とは「特定地域の構造および特質を言語、地理、歴史、政治、経済、社会、文化等種々の面から総合的(学際的)に研究することによって、当該地域の社会を全体的に理解、把握しようとする新しい学問」であるということができる。
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