(1) はじめに
筆者は20年前、上智大学の『外国語学部紀要』に研究ノートとして「外国語と地域研究一国際教養人育成の方法」という小論を書いた。その狙いは当時、語学教育に比べて立ち遅れが目立つ地域研究の必要性を指摘し、語学教育と並んで地域研究の教育面の内容充実を図ることにあった。
確かに、この十数年間、日本の国際化に伴って地域研究に対する関心はさらに高まってきたように思われる。しかしこうした関心の高まりの割には、学問としての地域研究の確立は遅々として進んでいない状態である。むしろ地域研究と同様に学際研究を目指す国際関係論の台頭が目立っている。国際関係学部を新設する大学が近年増えているのは、こうした傾向を示すものといえよう。
では、学問としての地域研究の確立が遅れているのは何故であろうか。その原因としては、第1にわが国において主に地域研究を担って来た外国語大学ないしは外国語学部の限界といった問題を指摘することが出来よう。つまり外国語大学とか外国語学部といった枠組の中では、外国語と地域研究の両立が仲々難しく、それが地域研究の確立を遅らせる要因となっているのではないかということである。第2の原因は一般によく言われていることだが、地域研究の定義が難しいことである。もともと地域研究は社会的二一ズによって始められたため、必要性や実用性が先行し、定義が唆昧で体系化しにくい性質を持った学問である。つまり概念が必ずしも明確でないことから、学問としての地域研究の確立が妨げられているのではないかということである。
本稿では、地域研究とは何か、何故、地域研究が必要なのかについて検討したあと、地域研究の歴史を回顧するとともに、その現状と問題点を明らかにしたい。
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